Novel

□星数
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あいつを、思いながら―…

いつだって俺の中心はあいつだった。
音楽が中心だった俺の中に突然あいつは現れて。あいつは台風の如く、すぐに俺の中の全部を巻き込んで俺の世界の中心になった。

俺はあいつに狂った。
好きで好きでしょうがなくて。
逢う度に、逢わなくても増える続ける、あいつが好きだという感情に何度振り回され、埋め尽くされそうになったかわからない。
そんな埋め尽くされそうな俺の感情を、何度歌に詰め込んだんだろうか。
その中でも「only you」は、あいつのためだけに作った歌だった。

…結局、あいつに聞かせる事なんて、出来なかったけれど。

聞かせてやろうと心に決めた翌日、あいつは「志波が好きだ」なんて言うもんだから、溢れ出る感情を何処にぶつけたらいいかわからなかった。
あいつの目には志波しか映ってはいなくて。俺が入り込む隙なんて、ありはしなくて。
悔しかった。
嫉妬と羞恥で覆い尽くされ、俺は歌を作る事さえもままならなくなった。
そんな時期。
俺は井上に言われた事がある。
スポットの眩しい光と、数え切れない位の歓声を浴びる今でも、忘れられない言葉。


「のしん、もう諦めちゃうの?…ま、いいんじゃない?」



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本気で言う奴初めてみた
(俺を好きにならなかった事後悔させてやる!)



ちなみにあいつはちょこちょこと志波と二人で俺のライブに来る。
ライブの時、俺だけに贈るあいつの眼差し。
志波には絶対向けられる事がないと思うと、なんだか少し優越感。

20091015
一片一檎
Hitohira Ichigo
*
Afternoon tea





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