Novel

□注意報
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ぷに、ぷにぷに

「わ、ちょ、やめ」

あいつの細くて長い指が俺の頬をつつく。

それも、運転中に。
危うくよそ見運転しそうになる。

「え〜」

車を走らせているとタイミング良く"よそ見運転に注意"の看板。
なんだか今の俺のためにあるようなものだな、と気を引き締めた。

今、植物園の帰り道。
調度、帰る所だ。
隣に居るお姫様を送る途中。

「えー、じゃない!」

この隣に座っているお姫様は厄介だ。
バイト先の後輩で、もっというとはね学の後輩でもあって。
何が厄介だって、こいつは事あるごとに俺に触る。
多分、男として接して貰えてないんだろう
「真咲先輩面白ーい」
ケラケラと無防備に笑う俺の後輩。
こいつ、男がどんなものか知らないのか。
車という密室。何をされてもおかしくない状況。それなのにこいつは疑うどころか無防備に笑ってる。
信頼してくれてるんだろうが、なんだかちょっとだけ複雑な気分だ―……

………?
体に違和感。

何事かと思えばこいつは俺の体を撫でて…いて…?

撫でていて!?

…っ!?な、なななにしてんだっ!?
「真咲先輩筋肉すごーい」
さ、誘ってるのか!?
いやいやいや!悪戯だろう…!
いや…悪戯にしても、これはないだろう…

―…もし悪戯じゃなく、本気だったら…
いやいやいやいや!
ないだろ、ないだろ…こいつは…こいつは、いや、でもあるかも…

っ!?

唇に違和感。
「わ、ばか!」
こいつ今…唇、触った…!?
「わっビックリしたぁ…」
後輩はいきなり喋らないでください、とぷりぷり怒っている。

やっぱり誘ってる
絶対誘ってる
誘ってないならなんだっていうんだ
誘ってるんだ絶対誘ってるんだ
気づいてやれなくてごめんな
「なぁ、今日は俺のい」
「先輩前っ!まえーっ」
「え、ぁ…うおぉっ!?」
信号が、止まれの色。
赤。赤赤赤。ストップ。
反射的に急ブレーキを踏む。

「あっぶねー。サンキューな」
「もー!真咲先輩よそ見しちゃだめですー」
このやろ…誰のせいだ!
でも助かった。
今の赤信号で少しは冷静になれた気がする。
冷静というか、ヒヤッとしたというか、まぁとにかく落ち着いた。
「あ!そういえば。さっき先輩何て言いたかったんですか?」
「へっ!?さ、さっき…?」
まさか。
「俺のい…とかなんとか…?」
聞いてたのか!?
「あー!あれか…」
家に泊まらないか、なんか言えるかっ!!
理性が半分崩壊していたさっきならまだしも…
「もしかして、家に…」
「みっみなまでいうな!」
あぁああ…もう無理だ…
「わ、真咲先輩顔真っ赤…」
ずい、とあいつの顔が近付く。あいつの香りが鼻腔をくすぐる。体温が上がる。
「大丈夫ですか?」

それでもぺたぺたと顔を触る後輩に
「まてっ!」
「今日はもうスキンシップ禁止」
ストップをかける。
「なっなんでですかー!?」
「なんでもだ。」
誰のせいで死にかけたってんだよ。
なーんて心の中で毒づいてやる。





スキンシップは禁止事項に追加だな

20100512
一片一檎
Hitohira Ichigo
*
Afternoon tea





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