Novel

□妖精ノ、
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「誓いも兼ねて、さ」

今あいつは、あいつが片想いしてた奴から告白されてるらしい。
いっこ下の、新名ってやつから。


教会の開いた扉から見えたのは、あいつとその新名がキスしている所で。

ステンドグラスがやけにキラキラ光っていて。
それは、あまりにも俺とは違う世界だった。


****


West Beachに向けてバイクを走らせる。
沈みかけた太陽の光に反射して光る海面が、いつも見ているはずなのに、今日は一段と輝いて見えて。

陽を受けながら凪いでる海は、やっぱり綺麗で。

でもやっぱり一番輝いていたのは、綺麗だったのは、あいつだと思う。
いつもニコニコ昔と変わらない笑顔で。
素直で真っ直ぐで優しくて温かくてさ。



―あいつが幸せならそれでいい


でも、心がチクリと痛むのは何故なんだろうな。

でもこれでよかった。
俺はちゃんと応援してやれたと思う。

あいつは素直だから。
ま、俺が言う事をなんでもかんでも信じちゃう時は、正直困ったけど、結局あいつはハッピーエンドになれたわけだし?

あーあ。
俺ってやっさしー……なんてね



俺は幸せになっちゃいけないんだ

もし、もしだけど
応援してる時、俺があいつと幸せになる事を選んでいたら、今…新名を不幸にしていた所だろ?

俺が幸せになる事で、誰かが不幸せになるなんて考えただけでも…さ

うん、俺には出来ねぇよ

―…そんな事、




サクラソウは、心に思い描いた人の所へ連れていってくれただろ?

信じたから、あいつはあそこに居てくれた。

ね、
信じて、よかっただろ?


だからさ、幸せになれよ








(俺にはもう必要ないよ)

だって、お前とまた逢えた事が、俺の願いだったから


20100630
一片一檎
Hitohira Ichigo
*
Afternoon tea





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