ガロファノの花弁

□月下狩人
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「んー・・・」

今まで可畏と暮らしていたマンションとはまた別の地域にある高層マンションの最上階。高級そうな雰囲気を持つ部屋のベッドで、サロは気怠げに横たわっていた。地上の騒音も届きづらい此処は、一人で過ごすにはやや寂しかった。サロは裸体にパーカーを羽織っているだけの格好で、ベッド上のノートパソコンを弄りながら欠伸をする。やっているのは出会い系のアダルトサイトのサクラである。しかし仕事というよりは趣味の範囲だ。給金などオマケでしかなく、サロは他者の恋愛感情や性欲を弄ぶ事をゲーム感覚で楽しんでいる。

その時、奥にある扉の更に向こうにある通路から聞き覚えのある足音が聞こえた。サロはそれに気が付くとパソコンを閉じてベッドから起き上がる。ベッドから降りる時に丁度扉からカードキーの認証音がした。
扉が開き、嗅ぎなれた匂いを持つ人間が入ってくる。相手がこちらの寝室に来た所でサロは子供のような笑顔を浮かべて飛び付いた。

「おかえりっ」

痩躯なサロでも、飛び付いてはかなりの勢いがつく。抱き着かれた相手は少しよろけてからサロの片頬に手を添える。

「ただいま帰りました。サロ様」

ホストのようにはだけたワイシャツにスーツを纏っている可畏は優しく微笑み、乱れた黒髪を指で直した。サロの頬を指で撫でながら見つめる紅茶色の瞳は慈愛の色を含んでいる。対してサロは嬉しそうに瞳を夕日色に染めていく。

「ご飯にする?お風呂にする?それともオレ?」

「貴方のその身を求めれば、喜んでいただけますか?」

「流石。わかってるじゃない」

笑ってから、可畏の首の後ろに腕を移動させたサロは背伸びをして可畏の頬にキスをした。そのまま挑発的な娼婦のように舌舐めずりをし、スッと目を細めた。

「前のマンションと違って、此処ってすごく静かでつまんないんだもの。だから溜まっちゃってさ、カイが殉職して帰ってくるのをずっと待ってたんだから」

「それは・・・申し訳ない事をしてしまいましたね。許して頂けるでしょうか?」

「だぁめ、言葉じゃ許さない」

サロは可畏のはだけたシャツから覗く皮膚を舐めた。そして犬か何かのように首筋の辺りを甘噛み、うっすらと歯形を残させる。サロは何かを期待しているのか可畏を見上げながら頬を上気させ、可畏の耳元で甘く囁く。

「オレを体で悦ばせてくれたら、許してあげるよ」

紫の瞳を淡く光らせながら、可畏のシャツのボタンにサロの指が掛かった。






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