ガロファノの花弁
□異形を駆逐せし者
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高層ビルが立ち並ぶ夜の大都会。
車のクラクション、ド派手なネオン、人々の喧騒。それが此処には溢れている。
――グガァアァアアッ!!――
それに混ざる異様な咆哮。
高層ビルの屋上には異形の黒い影。
見た目は4tトラック程もありそうな巨大な犬。しかし背中にはボロ布のような翼を生やし、黒い皮膚には体毛は無く、ヌメヌメとした粘液を纏っている。
そして別のビルの屋上。
そこには、遠吠えを続ける異形を遠くから見遣る者達がいた。
「こりゃ大物だな!なぁサヴァ?」
あっけらかんとした声を出したのは、ややだらしなく乱した金髪オールバックの中年男性。ジャラジャラと着けたシルバーアクセと革ジャンが映えている。
「隊長、ふざけた事を言わないで集中しろ」
「ハイハイ、全く冷たいなぁサヴァちゅあ〜ん」
サヴァと呼ばれた青年は不機嫌そうに七三に分けられた銀髪を指で直した。眼鏡の下は赤い瞳。黒のトレンチコートが風になびいた。
「止めなくて良いのか?」
「いいんじゃね?リンドーがついてるし、早々死ぬなんてこたねぇだろ」
「だが・・・」
「うおぉおっ!!」
二人の会話を掻き消す大声が夜空に響く。
声の発生源は、異形の居るビルの真上。どうやら隣のビルから飛び移る為の掛け声だったらしい。
着地した声の主は、遠吠えをやめた異形に向けて、左手の中指を突き上げて見せる。
「Heyナメクジドック!夜中に吠えるなんて躾がなってねぇな、オレが躾てやるよ!」
右手に銃を構え、少年は異形に負けぬ音量で挑発をした。