ガロファノの花弁
□愛死合う血戦
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「はい、ルー。新しい通信機」
「おー!Thank you ホセリート!」
任務出発前、ルカは前回の任務で破損した通信機をホセに新調してもらっていた。ルカと竜胆の二人部屋の為、ホセも居ると少しばかり人口密度が高い。
竜胆は念入りに荷物を確認しつつ、二人の話に聞き耳を立てている。衣類などはすでに出発先に送られているが、武器は突然のDの襲撃の為に携帯は必須だった。
「今回はフレーム頑丈にしておいたし、留め具もなかなか取れないようにしてあるから。あとカメラもつけてみた」
「?、何でだ?」
直径3センチ程の通信機の真ん中あたりをホセは指差す。目を凝らしてみれば3ミリほどの穴が空いていて、そこからレンズが光を反射した。
「何でって言われると・・・リンがどさくさに紛れてルーに何かしないかなって」
「んな゛っ!?」
「ホッホセさんっ!?」
目を見開いたルカに対し、竜胆はすぐに立ち上がり抗議の声を上げた。その顔は真っ赤だった。
「僕を何だと思っているんですか!しませんよ絶対っ!」
「いや、人間何するか分かんないし」
「それでも有り得ませんってば!」
ホセは竜胆の言葉を流し、せっせとルカのジャケットの襟に通信機を取り付ける。固定するとツナギのポケットから小型のノートパソコンを取り出し、何かを入力してからルカに見せた。
画面にはルカの正面に立つホセが写っている。
「ん。こんな感じで写るから」
ぽんぽんと肩を叩かれて、ルカは取り敢えず頷いた。ホセはパソコンを戻すとルカの頭を撫でた。
「じゃ、リンと一緒に頑張って」
「おぅ、パッと行ってチャチャッと片付けて帰ってくるぜっ」
そのままハイタッチをして、開けっ放しのドアから通路に出たホセの動きが一瞬止まる。
「どうも、カイ」
「嗚呼、ホセ君も見送り?竜胆君、ルカ君、準備はちゃんと終わったかな?」
ホセの少し奥に立ち、通路からこちらを覗き込んできた可畏は優しく微笑した。携帯電話を片手にしている姿は珍しい。
「可畏兄さんっ!」
「今回はシチリアのタオルミーナだそうだね」
「はい」
竜胆は元気良く返事をした。
ルカはそれを聞いて思い出したかのように可畏に声をかけようとする。可畏は持っていた携帯電話を懐中に戻して話を聞く姿勢になってくれた。
「聞いてくれよカイ。リンドーの野郎、オレがイタリア語できっからって聞き込みとか任せる気満々なんだぜ?」
「違いますよ。イタリア語が覚えられなかったので頼んでるだけです」
「そうなのかい?というかルカ君、イタリア語なんて出来たんだね」
「そりゃあ、母国語だからな」
ルカはえへんと胸を張った。しかしルカは孤児院時代からは英語を使っているため、そこまで強い訳ではない。
「頼れる後輩で良かったね、竜胆君」
「は、はい・・・」
気恥ずかしそうに俯いた竜胆を少しばかり笑ってから、可畏はふと目付きを変えた。
悲しむような、哀れむような目で。