ガロファノの花弁
□お前達の居場所
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よく知る気配の接近に、ルカはちらりとドアへ目をやる。
「ん?今日はルーひとり?」
風の通りを良くしようと、部屋にある窓や通路に出るドアを全て開け放ってビデオゲームに勤しんでいたら、通路からホセがこちらを覗き込んでいた。ルカはゲームを一時中断して上体を通路側へ向けた。
「そ。リンドーは朝から3時間くらい検査、と言っても今はもう残り40分くらいだ。誰か退屈なオレに付き合ってくれねぇかな?」
「俺でいいなら」
「Thank you。ホセリート」
ししし、と笑ってゲームの電源を切る。ホセが部屋に入って近場に胡座を組むのを確認してから、ルカはテレビの電源も同様に落とした。
「何飲む?」
「飲み物とかじゃなくてアイスとか無い?」
「あー、あったあった・・・」
暗赤色をしたノースリーブのパーカーに黒のスウェットパンツというかなりラフな格好で立ち上がったルカはふらふらと冷凍庫を開けた。中身はかなり入っているらしく吟味するように手探りした後、内二本の棒アイスを取り出した。
「ん。ソーダとコーラどっちがいい?」
「コーラで」
「はいよ」
ルカはポイッとアイスを投げ渡してベッドの上で俯せに寝転んだ。そしてアイスの包装を剥がして口に運び、思い出したようにホセに尋ねる。
「そういや、何か用だったか?」
「うん。上からのちょっとした話と俺の個人的な用事」
「上から?」
ホセは頷く。彼はアイスの包装をルカが放った物も含めてごみ箱に捨て、ルカに向き直った。
「二人共、来週から職場復帰だって」
「おっ!ホントかホセリート!やったぜ」
一ヶ月以上は戦場から離れていたのだから、素直に嬉しい。これで漸く兄を追うことが出来るのだ。
「復帰出来るからって、張り切りすぎたら駄目だからな。一応、ルーは監視されてるんだし」
「わ、わかってるってば」
ガリガリとアイスをかじりながら、ルカは目線を逸らした。無論、不審行動と受け取られるような行動は自重するつもりだ。それで万が一、竜胆にも被害が来たら困る。
「それと、此処からは俺の用」
「あ?」
聞かれてはまずい話なのか、ホセはのろのろと通路へのドアを閉める。内容に予想がつかず、ルカは首を傾げながらも再びガリガリと残りのアイスを噛み砕いた。こちらに戻ってきたホセは少しの間を置いてから口を開く。