ガロファノの花弁

□異形を駆逐せし者
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――グルルルル・・――

挑発が通じたのかは定かではないが、異形は唸り声を上げてコンクリートを爪でえぐる。

結った赤茶の髪をなびかせて、少年は地を蹴った。実に高さ3m、恐るべき身体能力である。そして、赤いジャケットに忍ばせていた手榴弾を異形に投げつけた。

爆発。

コンクリートが爆風に飛ばされ、地上に落ちる。街の喧騒に悲鳴が混ざった。その戦闘から離れている別のビルで見守っていた男性二人は、溜息をつく。

「あの馬鹿・・・」

「ありゃあ・・騒ぎになっちゃうじゃんなぁ・・」

顔を押さえるサヴァに対し、彼に隊長と呼ばれていた男性は飛び散ったコンクリートで騒ぎになり始めた地上に顔をしかめる。
サヴァは呆れながら襟についていたマイクのスイッチを入れる。

「竜胆、あの馬鹿に任していないで行け。これ以上騒ぎを大きくさせるな」

「"了解しました"」

静かな返答に顔を上げる。

爆風の中から肩口の吹っ飛んだ異形が反撃に出ていた所だった。不揃いだがびっしりと生えた長く鋭い牙を剥き、少年に食らいつこうとした時、新たに現れた人影が投擲した菱形の刃物・・クナイが異形の爛々とした右目に突き立った。

――ガアァッ!!――

苦悶の唸りを上げて後退した異形と茶髪の青年の間に立ったのは、ブレザーのような上着を纏い、腰の位置で切り揃えた黒髪を高い位置で結い上げた少年。東洋的な顔立ちをしているが、切れ長の瞳は海のような青である。
その少年を確認して、茶髪の少年は食ってかかった。

「リンドー、オレの獲物だぞ?!手ぇ出すなよっ!」

「オレの獲物って・・・ルカ君、たまにはマトモに考えて下さいよ。手榴弾まで使って・・地上には人が居るんですから、もっと被害を考えて・・」

「うるせー!とにかく今回はオレが殺るっ!」

「ルカ君っ」

ルカと呼ばれた少年は忠告を無視して、異形に向かって走ってしまった。竜胆は諦めて行動を開始した。
痛みで戦意を失う事無く、異形は二人に向かって突進する。口から粘性のある唾液を咆哮と共に撒き散らした異形は、翼をうねらせて二人に突き出した。翼は槍のように変形し、かなりの速さでこちらに向かってきた。
対抗すべく、ルカは銃を翼に向かって連射し、翼の勢いを殺して回避した。一方、竜胆はクナイで一度受け流し、腿にあるホルダーに入った長い針の束から数本を取り出し、投擲する。
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