よく晴れた日の屋上。
寝っ転がっている黒猫のような奴の横に腰を下ろす。
「かーえでー」
「む…」
「やっと起きた」
「おー」
「いいの?卒業式出なくて」
そう、今日は卒業式。
いま式が行われているにも関わらずこいつは屋上で寝ていた。
まぁ、わたしもサボりなわけだけど。
「アンタは、先輩とかお世話になったでしょ」
「おー」
「少しは感謝の気持ちとかないのー?」
「バスケで答えるのが俺流」
「なーにが、」
また寝そうになってる楓を見ながらふぅ、とため息を吐いた。
「私たちもさ、いつか離れ離れになっちゃうのかな」
「…ん?」
「楓がアメリカ行っちゃったり、私は大学行ったり、どうなるかは、まだわかんないけどさ」
まだ見えない未来に、どうしようもない不安がでてきてしまった。
なぜか泣きそうになっている私を、楓は後ろから優しく抱き締めた。
「…楓?」
「何も考えんな」
「…うん」
「離れる気、ねぇし」
「…うん」
「距離が離れたって、気持ちが離れるわけじゃねぇし」
「…うん、」
「ちゃんと、好き、だし」
「ありがとう、楓」
ありがとうって言ったら、何も言わずにぎゅって、強く抱き締めてくれた。
きっと、どういたしまして、の意味をこめて。
楓の行動や発言のひとつひとつが嬉しくて、体の向きを変えて楓と向き合って、顔を見たら、幸せで涙がでた。
「泣くなって、」
「ごめ、」
少し困った顔をしたけど、私の涙を指で拭ったあと、そっと触れるだけのキスをくれた。
やっぱり幸せだ、ともう一筋涙を流し、また困った顔をした楓と笑いあった。
綺麗な青空の下で。