◆小説◆

□風の通り道
1ページ/3ページ

昼休み…

それは太公望の心が休まる、唯一の時間だった。


「くぅ〜っ!!風が気持ちいいのぅ…さて、昼飯にするかのぅ!!」


どことなくオヤジ臭いセリフを吐き、屋上のフェンスにもたれかかる。


ここは崑崙学園高等部。山奥に建っている、創立120年の高等学校。

屋上からは中等部の校舎が見える。


「授業中といい、休み時間といい…どうも誰かの視線を感じる気がしてならん」


行列に並び、やっとの思いで手に入れた購買のメロンパンをかじり、
ブツブツと独り言を呟く。

教室で受ける授業の時
太公望は、必ずと言っていい程、痛いくらいに視線を感じているのだ。


だから昼休みはその視線から逃れられる、落ち着ける唯一の時間。


「一体誰が…」


知りたいと思う気持ちもある反面、誰なのかを知るのが何となく怖くて、
モヤモヤした気持ちを引きずり続け、今に至る。


メロンパンを食べ終わり、屋上の床の上に寝転ぶ。


「…いい風だのぅ」


青い空が視界一面に広がり、風が頬を撫でていく。 
 
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ