◆小説◆
□風の通り道
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昼休み…
それは太公望の心が休まる、唯一の時間だった。
「くぅ〜っ!!風が気持ちいいのぅ…さて、昼飯にするかのぅ!!」
どことなくオヤジ臭いセリフを吐き、屋上のフェンスにもたれかかる。
ここは崑崙学園高等部。山奥に建っている、創立120年の高等学校。
屋上からは中等部の校舎が見える。
「授業中といい、休み時間といい…どうも誰かの視線を感じる気がしてならん」
行列に並び、やっとの思いで手に入れた購買のメロンパンをかじり、
ブツブツと独り言を呟く。
教室で受ける授業の時
太公望は、必ずと言っていい程、痛いくらいに視線を感じているのだ。
だから昼休みはその視線から逃れられる、落ち着ける唯一の時間。
「一体誰が…」
知りたいと思う気持ちもある反面、誰なのかを知るのが何となく怖くて、
モヤモヤした気持ちを引きずり続け、今に至る。
メロンパンを食べ終わり、屋上の床の上に寝転ぶ。
「…いい風だのぅ」
青い空が視界一面に広がり、風が頬を撫でていく。