◆小説◆
□ガラス越し
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15時35分。全ての授業が終わり、太公望は解放感にひたっていた。
「これでやっと帰れる♪」
そこへ満面の笑みを浮かべてやって来る天化。
「スース、一緒に帰ろ」
「そんなにニコニコして、何か良いことでもあったのか?…歯がまぶしい」
「そりゃ、スースと一緒に帰れるからに決まってるさ」
太公望はちょっと赤くなり、それから呆れた様に言った。
「なんじゃそら…というか……歯がまぶしい」
「スース…歯のことがそんなに気になるさ?(笑)」
「まさしくおぬしの歯は新庄並みの白さだ」
普段、帰宅部の太公望と剣道部の天化はめったに一緒に帰ることはない。
だが今日からテスト1週間前で部活がない。ということで、二人は一緒に帰ることにした。
「あれ?望ちゃんと天化君、もう帰るの?」
教室から出ようとした二人に、太公望の幼なじみの普賢が話しかけてきた。
「うむ。おぬしこそ、まだ帰らぬのか?」
そう言うと普賢はにっこりと微笑んだ。
「今からわからないところを先生に聞きに行こうと思ってるんだ」
「…ご苦労様です」
「ううん、自分のためだから…」
もっともな事を言う普賢。
「わしの分までがんばるのだ」
「ついでに俺っちの分も…」
不可能な事を言う二人。
「じゃあまた明日ね」
「さよならさ」
「うむ」
教室から出ていく二人を、普賢は黙って見つめていた。