◆小説◆

□俺っちの、一番欲しいモノ
2ページ/2ページ


 天化が太公望の部屋に入ると、当の本人はぐぅぐぅといびきをたてていた。
ニヤリ。天化は不敵な笑みを浮かべる。

(遂にこの時が来たさ!!)

グッと、天化の拳に力が入る。
そして…

「スース、起きるさvV」

ちゅっ

「………のわぁああ!!?」

頬に何か生暖かいものが触れた感触がして太公望が目を開けると、天化が自分の上に馬乗りになってにっこりしているではないか。

「ななっ…何という起こし方だ」

「え?ヤだったさ?ほっぺにちゅー(笑)」

「…?何かもう太陽が随分上にあるような気がするが」

あえて天化の発言をスルーし、太公望は首だけ動かし外の様子をうかがい、怪訝な表情を浮かべる。

「まさかとは思うが…もう昼近くではないか?」

「あたりさね」

「いつもより早く起こせと言ったであろう!!?」

血相を変えて自分の上にいる相手に向かってわめきちらす。

「今日は会議があったというのに!!」

その様子を天化は黙って見ている。


「嘘つき天化っ」

「クスッ」

「嘘つきは泥棒の始まりだぞ?まったく、武王や周公旦になんと言ったら良いのだ…」


 そう。俺っちは嘘つきさ。
 スースのためならウソなんていくらでもつく、大嘘つきなんさ。


「大丈夫さ。もう理由はつけてきたから」

「へ?」

キョトンと見上げてくる太公望に、優しく笑いかける。

「だから…邪魔者は誰もいねぇさ」

耳元で低い声でささやくと、太公望は耳まで真っ赤に染まった。





 嘘つきは泥棒の始まりってことは、俺っちはもうとっくに泥棒さ。

でも、欲しいモノはただ一つ。
それはねスース、あーたの心さ。
……なんてね。


***あとがき***
どうしちゃったんですか天化さん!!
ウチの天化さんはスースを想うあまり、まさかの行動にでてしまいました。←
でもこういう天化もアリかと思うんです。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ