◆小説◆
□俺っちの、一番欲しいモノ
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天化が太公望の部屋に入ると、当の本人はぐぅぐぅといびきをたてていた。
ニヤリ。天化は不敵な笑みを浮かべる。
(遂にこの時が来たさ!!)
グッと、天化の拳に力が入る。
そして…
「スース、起きるさvV」
ちゅっ
「………のわぁああ!!?」
頬に何か生暖かいものが触れた感触がして太公望が目を開けると、天化が自分の上に馬乗りになってにっこりしているではないか。
「ななっ…何という起こし方だ」
「え?ヤだったさ?ほっぺにちゅー(笑)」
「…?何かもう太陽が随分上にあるような気がするが」
あえて天化の発言をスルーし、太公望は首だけ動かし外の様子をうかがい、怪訝な表情を浮かべる。
「まさかとは思うが…もう昼近くではないか?」
「あたりさね」
「いつもより早く起こせと言ったであろう!!?」
血相を変えて自分の上にいる相手に向かってわめきちらす。
「今日は会議があったというのに!!」
その様子を天化は黙って見ている。
「嘘つき天化っ」
「クスッ」
「嘘つきは泥棒の始まりだぞ?まったく、武王や周公旦になんと言ったら良いのだ…」
そう。俺っちは嘘つきさ。
スースのためならウソなんていくらでもつく、大嘘つきなんさ。
「大丈夫さ。もう理由はつけてきたから」
「へ?」
キョトンと見上げてくる太公望に、優しく笑いかける。
「だから…邪魔者は誰もいねぇさ」
耳元で低い声でささやくと、太公望は耳まで真っ赤に染まった。
嘘つきは泥棒の始まりってことは、俺っちはもうとっくに泥棒さ。
でも、欲しいモノはただ一つ。
それはねスース、あーたの心さ。
……なんてね。
***あとがき***
どうしちゃったんですか天化さん!!
ウチの天化さんはスースを想うあまり、まさかの行動にでてしまいました。←
でもこういう天化もアリかと思うんです。