◆小説◆

□愛とか恋とか。
1ページ/3ページ


「今日も空が青いさ〜」
「青いのう…」


天化が隣で伸びをする。
今日で天化の家に泊めてもらってからちょうど1週間が経っていた。

いつも通りの昼休み。
いつものように二人、屋上でぼーっとして風にあたっている。

天化は空を見上げながらわしに言った。


「なぁスース。俺っち、好きな人ができたさ」

「…ほう?おぬしに好かれる女子はさぞかし嬉しいだろうな」

「なんでさ?」

「そりゃあ…おぬしは顔もいいしスポーツだってできる。それに、恋人ができたらすごく大切にしそうではないか。
まさに世の中の男は見習わねばいけない存在だ!」


いきなりのことだったので一瞬ぽかんとはしたが、わしは頭をフル回転させ、とっさに天化のことを心の底から絶賛した。
やつは意外とヘタレなので、わしが勇気づけてやらねば告白まで至るのに10年もかかってしまうかもしれない、そう思ったからだ。

絶賛された当の本人はこっちを見たまま目を点にしている。


「だからおぬしに告白されて困る女子などいないよ、自信を持て!」


天化の目が一瞬泳ぐ。
ふむふむ。照れているようだ。どうだわしの誉めちぎり作戦は!
わしは日頃から、どうして天化には彼女がいないのか疑問に思っていた。

天化との付き合いの中で、わしは人より天化のことをよく分かっているつもりでいる。
楽観的で、他人には干渉しすぎない。一見他人に無関心そうに見えて、人のことをちゃんと見ている人間。
やつのそんな性格は、自然と人を惹き付けていた。
あんなに荒れてた中学時代でさえも、女子には人気があったのだ。

だからわしは天化に、自分に自信を持って欲しくてこう言った。


「好きならそうと言ってしまったほうがラクだぞ?」
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ