◆小説◆
□俺っちの、一番欲しいモノ
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平和な西岐の夜。
計画はその時既に始まっていた…。
「天化、明日はいつもより早めに起こしてくれ」
毎朝太公望を起こしている天化は、了解さ〜と言って微笑む。
何かを企んでいるのが悟られぬように、とびっきりの笑顔で。
部屋に戻った天化は、寝台に腰掛ける。
「よっこいせ…と」
プチ太公望化している自分に気付き、苦笑した。
「スースもよく言ってるっけ」
太公望のことを思い浮かべていると、顔の筋肉がゆるんで自然とニヤケてしまう。
万が一誰かに見られてたらマズイと思い、ニヤケるのをやめる。
「さてと、明日に備えて早く寝るさ」
そう言って天化は早々と布団にくるまった。
…のだが。
…10分経過。
…20分経過。
…30分経過。
「…寝れねぇ!!!」
脳は活発に動いて、想像やら妄想を勝手にし始める。
そのおかげで目はギンギンに冴えてしまう。
「はっ、そうさ!!こういう時には羊を数えてみるさ」
(羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹…)
天化が不眠に悩んでいる間にも、夜はふけてゆく。
(羊が156匹…羊が…)
「あ〜っ!!もう、ダメさダメさダメさぁ!!」
さすがの天化も、一睡も出来ないまま朝になっちゃったらどうしようかと焦り始めるが、ここはひとまず冷静になって考える。
「やっぱり何も考えずに目をつぶるのが一番さね、…きっと」
このままブルーな朝を迎えてしまうのかと思いきや、修行で培ってきた集中力を寝ることだけに使い、何とかピンチを脱した。
*****
朝日が雪に覆われた大地をキラキラと輝かせてゆく。
日の出と共に、城の中の人々も少しずつ動き出す。
「そろそろ作戦決行さ」
昨晩、不眠に悩まされていた天化も
そう呟き、“作戦”を決行するために動き出したのであった。