あびす部屋

□ぬくもり
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右手が寒い。


ずっと貴方を
引っ張っていた右手が...
寒いの。



あの日。

イオン様が
惑星預言を読んだ日。


イオン様が消えた日から
私のココロみたいに
右手が冷えてく。


あの日から

何度、自分を責めただろう。

何度、天を仰ぎ謝っただろう。



何回責めても
何回謝っても

まだ足りないの。



フローリアンを見ると
胸が苦しくなる。


貴方と同じ顔をしてるから。
自分が犯した罪を思い出すから。


違う人だって分かってる。

私のイオン様と
アリエッタのイオン様が
違ったように。



でも
どうしても面影が見えるの。



たった2年だったけど
私はスパイだったけど
貴方の人柄の良さに
惹かれてた。




でも私は...
いつの間にか私にとって
1番大切な人になってた貴方を..




殺した。




この手で殺したも同然なんだ。



鮮明に思い出す現場。
何も出来なかった私。
冷えていく右手。



この汚れた手を
温められるのは

皮肉にも

今までも
これからも
貴方だけなんだろう。



自分で殺したも同然なのに
まだ貴方の温もりを求めて
しまう私は....
なんて罪深いんだろうね。




きっと
この罪悪感からは
逃げられない。



(アニス..僕の.....
1番.....大...切な..)



ずっとリピートしてる
消えてしまう間近の
貴方の声。


それだけが私の救い。

だけど、同時に
罪悪感に苛まれる。


あなたは
私の事をそんな風に
想ってくれていたのに。


私はなんて嫌な奴なんだろう。


大切な貴方の想いを
台なしにして....。




あなたが居なくなってから
しばらく時が流れたけれど
まだ立ち直れてない。



いつまでも
立ち止まってるのは嫌。


だけど、
今、私に出来る事ってなに?




いつか貴方は
ルークに言ったよね。

「出来る事から」って。



今の私に出来る事?



考えても、
一つしか思い付かない。




貴方を忘れない事。




貴方の全部を知ってるのは
私だけだから。


こんな事しか出来ない。
私は本当に無力だ。


でも、私にとって貴方は
いつまでも大事な人。

これだけは変わりないから。


だから、
何かしてあげたいよ。


無力なのは嫌だ。


だから....イオン様、
私はもっと強くなるよ。


まだ旅を続けるよ。




貴方に
償う方法を見付けるの。



そして、
いつか貴方に逢う日が来たら
また支えになりたい。




(...うん。アニス、
ありがとう。)



遠くから吹き抜ける風に
混じって聞こえた
愛しい貴方の声。


右手に
貴方の温もりを感じた気がした。

空耳かもしれない。

勘違いかもしれない。


「あっ!!セブンスフォニムですの!!
今、風に混ざってたですの!!」


「えっ....(イオン様..?)..」


「ん? アニス。
そんなにニヤけて
どうかしたのか?」


「何でもなーいっ」


きっと、
空耳でも勘違いでもない。

貴方は見ていてくれる。



不思議と
気持ちは晴れていた。



「ふーん。」



イオン様。

いつか私が
そっちに行ったら
また一緒に歩いてくれますか?


二人で一緒に


手を繋いで。

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