Short Story

□家族日和
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――午前7時過ぎ。
『お兄ちゃーん、朝ですよ〜』
一階から元気な声が響く。この声の主は遊子だ。まだ小五ながらも、亡き母の変わりをしっかりとこなしている。

もうニ、三回呼んでみたものの、当の本人からはなんの反応もない。遊子は『もう!!』と頬を膨らませると、台所に向かった。

『あ、夏梨ちゃん!!』
『アンタ朝から元気だね…大声出して』

欠伸をしながらテーブルに着いたのは、遊子の双子の妹。

『夏梨ちゃん…だってお兄ちゃんが中々降りて来ないんだもん…何時もなら降りて来る時間なのに…どうしたのかな…』


少し涙目になる遊子を横目で見ながら、夏梨はやれやれ…とため息を付いた。

『そんなに心配いらないと思うよあたしは。一兄も色々あるんだし』


そう言って夏梨は目を伏せる。脳裏には黒い着物姿の兄。何をしているかなんて自分にはよく解らないけれど、遊子に余計な心配はさせてはいけない。これだけは、解る。

『色々??色々って??』
『…なんでもない』


ボケっとしている遊子の顔を見た後、『それより朝ご飯』と夏梨が指した先は壁時計。普段なら朝食をとる時間。





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