頂き物・捧げ物等

□聖夜の僕等に
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今まで生きてきて、あまり気にした事のないイベント。それは忙しかったのもあるし、単純に騒がしい行事が自分の性分に合わないのもあるかもしれない。


だけど、初めて。
大切なイベントになるんだと、朝目覚めて改めて実感した。




いつもの通りに朝早めに出勤。書類を捌きサボる部下を叱咤し鈍らぬように剣を振るい、その最中もミントンに勤しむ部下を叱咤(という名の打撃)する。

…なんか毎日怒ってる気がするんだけど。


まあ最近は、ストレスを感じても帰宅後直ぐにリラックス出来るのでそれほど苦ではないのだが。





(それに前より煙草の量も減ったし)




周りの奴の中には副長は少し性格が丸くなったと言う奴も居るみたいだ(勿論俺自身にそんな実感は無いが)



それに気付いた上司が嫁さん効果だな、なんて大口を開けて豪快に笑った事がなんだか照れ臭くて、茶化すんじゃねェよと眉を寄せたのはつい先日の話だ。





『なぁトシ、今年の宴会どうする?』

『、今年は…』





屯所の自室にて休憩中、訪れた男の言葉に思わず口ごもってしまった。
随分唐突だななんて思うものの、今日が世間的にどっかの誰かが産まれた日の前夜祭前。それも今は休憩中だ。目の前でキョトンとする上司としては、日にちにも時間にも気を使ってくれたのだろう。


毎年その日に屯所では盛大に宴会が行われて、自分も参加はしていた。真撰組副長という立場上、隊士との交流をはかる為にもこういう場には極力参加したほうが良いのは解っている。



…いるのだが。今年からは、




『悪い』

『いやいや、気にするな!そのほうがミツバ殿も喜ぶだろうし、俺達とは次の日にでも出来るだろ?イヴぐらいは好きな人と過ごしたいもんなぁ。…あ、今年から隊士達にもそうするか!』

『…三十路近い男が"イヴ"とか真顔で言うな似合わねェ。笑わすんじゃねェよ近藤さん』

『あっ、本気で笑う事ねェだろ!俺だってお妙さんとなぁ、』

『じゃ、そういう事で頼むぜ』



豪快な顔して随分洒落た事を言うモンだから、そのギャップについ吹き出してしまった。ギャーギャー騒ぐ哀れな上司が今年こそ幸福になるようにと祈りながら、書類に目を落とした。




* * * * *




なんてやり取りがあった昨日が鮮明に頭に浮かぶのは、柄にもなく自分も浮かれていたからか、はたまたあまりにも印象に残っていたからか。





(今年からは一緒に出来るようになった)
(まあ。隊士の方とじゃなくても良いんですか?)
(あいつらとは次の日にでも出来る。…嫌か?)





随分と意地の悪くて野暮な質問をしたモンだ。ほんの一瞬だけキョトンとすると、妻はふわりと微笑んで




(ふふ、意地悪ね)





まだ耳に残る、鈴のような声。
あいつはほんのりと頬を桜色に染めて、とても嬉しそうに"じゃあ張り切って料理を作りますね"、なんて。




(──って、何思い出してんだ俺は。らしくねェ)




ゴホン、わざとらしく大きな咳ばらいを一つ。



昨日も本番である今朝も繰り返した会話。
それがあまりにも普通で、所帯じみていて、幸せで。
飽きもせず何度も何度も頭に浮かべては胸に広がるあたたかい何かを噛み締めた。


そんな思考の末、少し緩んだ頬に気付いての咳ばらい。チラチラと周りを伺って誰にも見られていないかを確認。(良かった。誰かに見られたらもう外出歩けねェ)



ふと、星空を見上げて思う。

寒空の下の帰り道。
たくさんの料理を作って帰りを今か今かと待っているであろう愛妻、ミツバに。



(プレゼントなんて柄でもねェけど、)




贈るのは、本当にささやかなもの。懐に入れたそれに軽く触れて、思い描くは愛しい妻の喜ぶ顔。




(喜んでくれるか?ミツバ)



無意識に足早になる。
真冬なのだから夜ともなると寒さが身に染みる筈だが、不思議と気にはならなくて。



どこからか聴こえたこの時期になると流れるクリスマスキャロル。その優しくなれるような音色は、今夜どれだけの人々に幸せを彩るのだろう。




高揚感に胸を踊らせながら、踏み締める先はきっと幸福への道。徐々に見えてきた明かりと夕飯の香りに、緩む頬をなんとか押さえながら扉に手を掛ける。





さあ、温かくて愛としい笑顔までもう少し。




聖夜の僕等に
(君に笑顔を届けに来たんだ)




Merry X'mas!


ーーーーーーーーーー
という訳で、レモンさんが企画して下さったX'masの作品です!

土ミツ夫婦ですが、ミツバさんが殆ど出ていないという…;こんな作品ですが貰ってやって下さい^^;

素敵なX'masを!


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