Short Story3

□今日は少しだけ
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(たまには奴を負かしてやりたい、と思ったりする訳で)




何時ものように二人で散歩をしている時、端正な横顔を見上げてふと思ったことがあった。



(どういう時、表情を崩すのだろう)



初めて会った時から今までの間、この男があからさまに表情を崩すところを見たことがない気がした。…否、実際のところ見たことがない。

この男は常に貼り付いたような薄気味悪い笑み(以前正直にそう言ったら表情には出さなかったがかなり落ち込んでいた)を浮かべているし、顔を崩すといったら寒気が走るようなあまり気分の良いものではない何時もより口角を吊り上げた意地の悪い笑みと、胡散臭いとぼけたような表情のみ。基本は微動だにしない男なのだ。

…一応は恋仲である相手に向かってそれで良いのかとツッコミを入れたくなるような言葉の羅列。市丸本人が聞いたなら、ひどく落胆するだろう。



(…わからぬ)



まあ哀れな市丸はともかく。
基本受け身は自分であって、調子を狂わせられるのは常にこちらのほうだ。故にたまには相手よりも有利な位置に立ち、調子を狂わす側になってみたいと思うのは人の性だろう。

どうすれば有利な位置につけるのだろうかと横顔を見ながら考えを巡らせている時だった。



「…あのー」

「なんだ」



それまで前を向いて歩いていた筈の市丸が足を止め、おずおずとこちらの顔を覗いてくる。少しだけ驚いたものの、なんとか冷静な態度で何とか返答することが出来た。



「…そない見つめられると、困るんやけど…」

「……」



恥ずかしそうに、モジモジと。
困ったように眉を寄せる。
良い歳をした男には不釣り合いなその行動。




(…あ)




どうすれば有利な立場になれるか。それが何となく分かった気がした。



「市丸」

「ん…?」

「…好き」

「………」



何時もは顔色一つ変えないその男が、ボッという音をたてて赤面した。

顔が見えないように手で覆ったその様子を微笑ましく思いながらも、面白いと感じたのは言わずもがな。



「好きだ」

「…何やの、もう…」

「私は嘘などつかぬ」

「…二番隊長さぁーん」




堪忍して…と顔を手で覆ったまま言う市丸。其処で許してやるものかと、真っ赤に染まった耳元でさらに追い討ちを掛けた。



からかい過ぎたのか、暫く顔を見てくれなかったのは言うまでもない。






(素直になってみるか)






(赤面したことに少し安心したのはここだけの秘密)



─────
市砕ならぬ砕市……?笑

市丸さんはSなので、攻められるのはめっぽう弱い筈!という突然の閃きに従って書いてみちゃったもの。

攻める砕蜂と、可愛い市丸さんの話でしたvv




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