Short story2
□初恋へのカウントダウン
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ポツリ、と。自分の中に浮かんだ表情。気持ちの変化。
例えるならば、それは春の陽射しのように暖かく
例えるならば、それは夏の風のように柔らかく
例えるならば、それは秋の夕暮れ時のように切なく
例えるならば、それは冬の雪のように淡いもので…
「よォ」
「…君か」
風に乗ってふわり、と甘く香るは彼。上手く東城を撒いてきて、降り注ぐ陽射しに公園で一休み。
一際目を引く銀髪が、太陽の光りにキラキラと輝いて。
「いやー…今日も暑いねェ」
「ん…」
初夏の陽射し。まだまだ夏本番ではないが、それはことごとく体力を奪っていく。出掛ける前に東城が、日傘を持つよう言っていたのを思い出した。
(だけどやっぱり持って来なくて正解だった)
(だって日傘に隠れていたら逢えなかったかもしれない)
「お前さ、日傘とか差さねェの?」
一瞬大きな風が吹いて、周りの音が消えた(ように感じた)
風が木を揺らす音も、蝉の大合唱も、みんなみんな消えなくなって
「どうして、そんな事を?」
「あー…日に焼けたら勿体ねェと思ってな。せっかくそんなに肌白いのに」
そう言ってバツが悪そうに頭を掻く姿を見て、頬に熱が集まったのが解った。なんでそんな事を?柄にもなく浮かれてしまう。
(君は、どんなつもりで言ったんだろう)
僕は男として育てられて、恋愛だとかそういう事には疎い。(だけどそういう事に憧れていないと言えば嘘になる)
本当は、家を飛び出したのもこの銀色に逢いたかったからなのかもしれない。(僕も恋、というものをしてみたいのかもしれない)
「オイ、暇ならちょっと付き合え」
「…え、」
「銀さんと甘味処デート」
そう言って頭をグシャグシャ撫でられ、ベンチから立たされる。暑いから甘味処で涼んで行こうぜとぐいぐい腕を引っ張られても、不思議な事にあの発作(発作といっても男性嫌いの)は起きなかった。
(ああ、また体温が上がった)
初恋へのカウントダウン
(今はまだ、初夏の陽射しのせいという事にしておこう)
Fin
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あと一歩で恋になりそうな九ちゃんと大人な銀さん。
銀さちも銀神も好きだけど、銀九も大好きです^^
まだまだ銀九は少ないけれど、私も頑張って布教活動したいと思いました!
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