Short Story
□灰色のソラ〜モノクロノソラ〜
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一人、また一人と。
任務で仲間(家族)を失う度に思うんだ。
───僕のしている事は本当に正しい事なのかって
灰色のソラ〜モノクロノソラ〜
此処は対アクマ部隊、黒の教団本部。
僕───そう、お洒落な眼鏡と帽子がトレードマーク。
名前はコムイ・リー。黒の教団の化学班・室長という役職についている。
僕には一人、歳が離れた妹が居てね。妹というより娘に近いかもしれない。名前はリナリー・リー。とっても可愛いんだよ。僕にとって、大切なたった一人の『家族』
僕とリナリーは両親をアクマに殺された孤児。
僕はリナリーに、もうこれ以上寂しい思いはさせなくなかった。
───もう…絶対にリナリーを一人にはしない。僕が側に居る。僕が居るから──。
僕は心の中に誓いをたてた。
親を殺されて悲しくて、寂しい思いをしない子供なんていない。
僕も例外じゃない。
でも、リナリーは…僕より幼くて。
悲しみや寂しさを上手く処理する方法をまだ知らなくて。
僕よりリナリーのほうが、悲しくて、寂しくて、壊れてしまう気がして。
ずっと怖かったんだ。
ある日突然リナリーは、イノセンスの適合者である事が判明し、黒の教団へ半ば強制的に連れて行かれ、僕達は離ればなれになった。
その日の事は、今でもハッキリ覚えてる。
リナリーの悲痛な表情と、泣き続けて枯れた声。
その側には何も出来ずに居る無力な僕。
まるで、「あの日の悪夢」のような光景を見ているようだった。
約束、したのに……
何も出来なくて、ごめんね………リナリー…
きっと、すぐ。追い掛けるから。
きっと、リナリーの側に行くよ。
僕はそっと小さな声で呟いた。でも、その声が届くハズはなくて。
リナリーの姿が小さくなり、見えなくなるまで、ずっと。
その場から動けず、しばらくの間立ち尽くしていた。
それからの僕は、必死に勉学に励んだ。
どうすればリナリーの元へと行けるのか。そんな事ばかり考えてた。
* * * * *
それから3年後。
僕はやっと『室長』という役職に着く事ができ、リナリーの側に行く事が出来た。
3年振りに会った大切なたった一人の妹。最初に見た時は思わず息をのんだ。
あまりにも痩せ、カサカサになった肌。
涙が枯れ果てた目。
そして、声。
3年という長い間、リナリーがどんなに苦しかったか。
リナリーがどんなに寂しかったか。
変わり果てた姿を見た瞬間、痛感したんだ。
僕は、胸が締め付けられる感覚に襲われた。
もう大丈夫だよ。今度こそキミを一人にはさせない。寂しい思いはさせないから。
僕はリナリーを早く安心させてあげたかった。震えそうな声を懸命に抑えながら、大丈夫だよって気持ちをたくさん込めながら
『ここがお家だよ』
一言、そう呟いた。
リナリーは、僕の言葉をちゃんと受け止めてくれた。長い言葉で言わなくても、理解してくれたんだ。
僕もリナリーとこれからは『一緒』に此処に居るって事を
ねぇ、リナリー。
寂しかったよね…辛かったでしょう?
今までは、リナリーを悲しみや寂しさから助けられなかった僕だけど。
お兄ちゃんも頑張るよ。きっと大丈夫。
今度リナリーが涙を流す事があったら(今までは慰める為だったけれど)今度は安心させる為に。精一杯の優しい気持ちを込めて…優しく頭を撫でて、そうっと抱きしめてあげよう。
* * * * *
そして現在。今に至る訳だけど。
僕は最近、また思う事があるんだ。
ここ数年、命を落とす仲間が多い。
ノアの一族が戦線に出てきたのも影響して。
元々、アクマと関わる事は安全が確実に保証されてる訳じゃない。
それでも。
何人の仲間が命を落とそうとも、僕は室長として、時には冷徹に苦渋の決断をしなくちゃいけない。
皆には冷たく見えてるに違いないよね。
そして、リナリー。
リナリーも仲間を失って泣く事が多くなった。
泣かせたい訳じゃない。僕は兄の立場と、室長の立場の間で内心苦しむ事も多い。
仲間をたくさん失って、たくさんの涙が流れた日には。
僕のしている事は正しいのか?永遠に答えの出ない質問を自分自身に問う。
でもね、そんな時。
皆と騒いでいる時や、リーバー班長に捕まった時。
リナリーが入れてくれた珈琲を飲む時。
そしてなにより、任務から無事に帰って来たキミ達が『ただいま』って笑顔で言ってくれた時。
僕は自分のしている事が正しい事とは解らないけど、皆の支えになっているって。幸せだって事は解るんだ。
だから、この珈琲を飲み終わって少し仮眠を摂ったら、また頑張ろうって思えるんだよ。
あ、またリーバー班長が室長〜って騒いでる…少し疲れたから、寝て起きてからゆっくり話を聞くとするよ。
それじゃ、おやすみ。
痛たたたた!!コラ、歯が疼くのは解るけどさ。顔に噛み付くのはやめなさい。
〜Fin〜