Short Story

□未来予想図
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『あーあ、こんなに目ェ腫れちまって…どうすんでィ明日』



『誰のせいだと思ってるアルか』



『俺』



『きっぱり言うのムカつくネ…解ってんなら聞くんじゃねーヨ』



『どっかのエセチャイナ留学生さんが俺にベタボレしてるから』



『テメッ、実はナル男アルな!?』



今の気分では喧嘩も出来ないのだろう。
言葉とは裏腹に、どこか寂しげだが穏やかに会話が出来ている。




『なァ、チャイナ』



『ん?』




沖田は立ち上がると、フェンスから腕を出し遠くを見つめて黙り込む。


その横顔からは表情をよく確認する事が出来なかったが、真剣さは伝わってくる。


沖田は意を決したようにそのままポツリポツリと言葉を紡ぎ始めた。




『もしもだぜィ?もしまた会えた時、チャイナの気持ちが変わってなかったら―――』






「     」






枯れたはずの涙がまた零れ落ちて、それに気付いた少年は困ったように笑って。



泣き虫チャイナ、と小さく呟いた。



それが悔しくてうるさい!と反論しながら懸命に涙を拭ってその場にしゃがみ込む。



オイあんまり目ェ擦るな、と頭上から聞こえるが無視して黙り込む。
…こうなると神楽は頑固だ。


その様子にやれやれ…とため息をついて沖田も神楽の隣にしゃがみ込んだ。


なんとか機嫌を直して答えを聞こうと、僅かに見える林檎色の頬を指でつっついてみる。




『チャーイナー』


『………』



『返事はどうなんでさァ?』


『……』


『留学生の神楽さーん』


『冗談はやめるヨロシ』



突然聞こえたその言葉に一瞬目を見開くが、すぐに不敵な笑み浮かべて「どうして?」と続きを促した。




『…帰って来れるかも解んないネ』



『あらら、チャイナは知らないんだねィ。俺結構しつこいんだぜィ?』



『…無理アル』



『…テメーが帰って来るまで待っててやらァ』




――そんなのズルい。
やっと離れる決心がついたのに。



絶対、なんて解らないのに。




『それでも信じられねェって言うなら、』




また会えると期待してしまう。




『俺がテメーを迎えに行く』




本当にそうなるかもしれない、なんて柄にもなく思ってしまう。



『…は、とんだ大嘘つきネ』




『嘘つきで結構。テメーみてェなじゃじゃ馬を乗りこなせるのは俺ぐらいだもんなァ』



『どういう意味だコルァ!!』





コイツも相当の馬鹿だけど、そんな言葉を信じてしまう私も相当の大馬鹿者。




そう考えた時点で、私の答えは決まっていた。




『じゃあ、』




『…!』





耳元で“絶対幸せにしろヨ”と囁いて。




沖田の顔が赤く色づいたのは、きっと気のせいじゃない。




『…素直じゃねぇ返事』


『うっせーヨ。嘘付いたら針千本だからな』



『…上等。覚悟しとけよ?』






チャイナの気持ちが変わってなかったら―――





“結婚しようぜィ?”







未来予想図







いつかその言葉を本物へと変える為の、小さな契り。








〜Fin〜

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