Short Story
□日番谷の苦労
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『チッ…』
出勤してからすぐに散らかった情景を目の当たりにし、朝から怒った日番谷の機嫌は、部下がどこに溜め込んでいたのであろう目の前の大量の書類を裁く事で最悪に悪くなった。
心なしか、いつもより執務室内の温度が低い気がする。
いつになく刻まれた眉間の皺は深い。だが、乱菊にとってはいつもの事なのか特には動じていないようだ。
『松本、茶』
『ハイハ〜イ』
軽く返事をして席から立ち上がると、鼻歌を歌いながら茶を煎れに行く。
『…絶対反省してねェな』
日番谷はまた青筋を浮かべながら、書類を手に取る。
――コレ締め切り過ぎてんじゃねぇか。
また副官を怒鳴り付けそうになったその時、向こうから近付いて来る霊圧に気付いた。
―――この霊圧……
それは幼い頃からよく知った霊圧だった。自然と刺々しい気持ちが無くなるのを感じた。
『五番隊副隊長の雛森桃です』
軽いノック音と共に彼女独特の高いが落ち着いた声。
『入れ』
『失礼します』
軽く頭を下げてからその少女は日番谷に書類の束を渡す。
『日番谷隊長、書類をお持ちしました』
その言葉遣いに、日番谷はギョっとした。いつもの彼女は敬語なんて使わないハズなのに。