Short Story
□昔はかわいかったのに
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ひどくねぇ、と日番谷くんは面白そうに笑った。
『小さい頃はそんなに意地悪じゃなかったのに!!』なんて言ったら、『ハイハイ』と彼は呆れたように相槌を打つ。
―――ホラ、やっぱり。
よく解らないなんて言ったけど、本当はちゃんと解ってたの。
ほら、また立場が逆転してる。
昔は日番谷くんが私の言う事に違うと言い張って、今じゃ私のほうが子供みたいで。
昔は私が護ってるつもりだったのに、いつの間にか私が彼に護られてた。
いつの間にか私は、彼に追い越されていて。
『男の子って…いつの間にか成長するんだね』
彼は私の言葉に目を見開くと当たり前だ、とデコピン。
『ふわぁっ!!』
痛さに顔を歪めるながら顔を上げると、彼はいつになく大人びた表情を浮かべながら
『いつまでも餓鬼じゃねぇからな?』
そう小さく耳元で囁いた。
不覚にもその顔に見取れてしまった私は、その事を悟られぬよう、顔を伏せる。
(昔はかわいかったのに…なぁ)
近くにいすぎて解らなかった事。
幼なじみの男の子は、気付けばいつの間にか。
護ってくれる、格好良い男の子になっていた。
〜Fin〜