頂き物・捧げ物等
□拍手文
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『…本当にあっという間ですね』
それは買い物をした帰り道。晩御飯の材料を詰め込んだ袋を両手にぶら下げながら、白い息と共にポツリと呟かれた言葉。
『あァ?何言ってんだお前』
『爺臭いアル。遂に頭がいかれたアルか』
『そこまで言うことねぇだろうが!!…違いますよ。この前まで冬だと思ってたのにもう3月でしょ?もう春なんだなぁ…って』
『どっちにしろ爺臭いじゃねーか』
『うるせーよ!』
新八はふてくされたまま、真面目に聞けよ、と呟いた。
もう空が茜色に染まっており、思わず見とれてしまいそうなぐらいだ。
(…綺麗ネ…)
茜色から目を反らせず上を向いて歩いている(なんかこんな歌があった気がする)と、『転ぶだろーが』と銀ちゃんに頭を叩かれた。
『でもよォ、銀さんまだ全ッ然春なんて気がしねェんだけど。寒くね?どこが春なんだオイ。テメーら銀さんが納得するように15文字以内で簡潔に述べろ』
『また無茶苦茶言うんだから…寒いのは仕方ないでしょ?これから少しずつ暖かくなるんですよ』
『ハイ!「ご飯が美味しい」です!』
『答えちゃったよ!!』
『バカヤロー、テメーは年中だろうが。却下〜』
『え〜』
『あのね銀さん、まだ寒いですけど…でも春はもう目に見えるところまで来てるんですよ』
『じゃあその春ってやつを今すぐ見せてみろ15文字以内で。春を出せやコルァ15文字以内で』
『無理言うなよ!つーか、アンタ言ってることおかしいから!なんでそんなにかたくな!?』
取っ組み合いを始めたバカな男二人はほっとくことにしよう。
傘をくるくると回して、また上を向いて歩いてみる。…と、
『――あ、』
ふと何かの香りが鼻をくすぐった。
『…?』
近付いてみればそれは木の先にポツリポツリと咲き始めている小さな花。
こんなに寒いのに、もう咲き始めているなんて…
名はなんといっただろう。確か―――
『梅だね』
代弁するように聞こえた声に顔を上げると、向こう側で喧嘩していたハズの二人が両端に。
『へーェ、中々風流なモン見つけたじゃねェか』
『マジでか?』
『うん。小さいけど、ちゃんと春だよ』
『マジでかァァ!』
なんだか嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねる神楽を見て、銀時と新八は優しく微笑んだ。
『あ〜あ、結局春が見つかっちまったなァ』
そう言って私の頭をくしゃくしゃと撫でる銀ちゃんの手はとても温かい。
『まぁまぁ、良いじゃないですか。でもこれで春だってことは証明されましたよ。お手柄だね、神楽ちゃん』
その新八の言葉はとても温かくて、どこかくすぐったかった。
『さ、帰りましょうか!今日の晩御飯はカレーですよ!』
『キャッホゥゥゥ!』
『ったく、まだまだガキだなオイ』
小さな春を、
さぁ、みんなで探しに行きましょうか。
〜Fin〜
たまにはほのぼのも、悪くないよね。
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