頂き物・捧げ物等
□拍手文
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『二番隊長さ〜ん』
ピクリ。
眉が不自然に釣り上がるのが解った。
その声が近付いて、『ああ、バレンタインなんて気にするんじゃなかった』、と落胆するのは何回目だろうか。
この張り付いたような笑みを浮かべた男は、あのバレンタインの話を事あるごとにしてくるのだ。
こちらとしては恥ずかしい出来事な訳で、早く脳内から消し去ってしまいたいものを。
―――弱みを握られた気分だ。
『今日は何の日でしょうか。二番隊長さん知ってます?』
『…知るか』
『嫌やなァ、二番隊長さん。『知るか』やのうて、もうちょい普通に言ってくれへんと傷付くわァ…ホラ、ボクにチョコくれた時みたいに……』
ドスッ
言葉に被せて真横の壁にパンチをくれてやる(見事に少しひび割れた)と、真っ青な顔で『す、すんません』と呟いた。
…どうやら反省したらしい。
恥ずかしさに"バレンタイン"と聞いただけで顔が赤く染まる為、睨んでもあまり意味はなかったようだが。
『用があるなら手短に言え』
『手短に?……ええよ』
その言葉にしばらく考え込むと、意味ありげに微笑んだ(それになんだか怪しい)。
…何か良からぬ事を思い付いたに違いない。
『―――蜂、』
耳元で、普段よりも低く。どこか優しく囁かれる。
(……くそ、)
やっぱりコイツは苦手だ。
手から力は抜け、書き進めていたハズの筆が床に転げ落ちたのが解った。
気安く呼ぶなと思うものの。
そう呼ばれることをどこか心地よく思っている自分が居る。
そう思ってしまう自分が、なんだか悔しい。
そう、いつだってこいつのペース。
私はこいつに、ペースを乱されてばかりだ。
『この前のお返し』
くすぐるような、もどかしいような声に思わず身を縮ませる。
――と、
『――あ、』
『ん、よう似合うわ』
シャラ、と涼しげな音をたてたそれはいつの間にか首元で淡く光りに反射して。
(いつの間に…)
『可愛えよ』
『…』
『あら、照れてもうた?』
『…うるさい』
そのペンダントに想いを込めて
ボクからの、気持ち。
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