頂き物・捧げ物等

□拍手文
17ページ/27ページ




「…井上サン、」


「なんですか黒崎くん」


「あの、もうちょい離れてくれると助かるんスけど」


「えっ…なんで?」



「……いや、」




柔らかな感触が当たってるんですけど!

…なんて言える訳ねーし…




「恥ずかしいから」



「……そっか、」




寂しげにそう呟いて離れる体。さっきまであんなにドキドキしてた心臓はやっと落ち着きを取り戻した。


だが彼女の体温が急に無くなって徐々に冷たくなる背中に、寂しさを感じる。


…矛盾してるって?それは自分でもよく解ってるけど!




チラリと井上の表情を覗くと、動物の耳があるなら明らかに耳が垂れているような様子だ。
つまりはかなり寂しそうな……



(あああーくそ!そんな顔してんなよ!)



そしてそんな井上の側にいるのは、そんな表情には弱い俺であって。





「……井上、」


「わぁ!!」



胡桃色の寂しそうな兎を、腕の中に閉じ込めた。



…まぁそれは口実で、


本当の1番の寂しがりやは俺かもしれない。



「黒崎くん、」


「なんですか」


「恥ずかしくない?」


「…違うって言ったら嘘になるな」



「ふふふ、あたしも」


「…」


「黒崎くん」


「ん?」


「ありがと」


「…オウ」




兎体温




本当は顔から火が出そうなぐらい恥ずかしいけど、その代わりにこの体温を手に入れたから。



今は恥ずかしさを忘れて、もう暫くはこの体温に寄り掛かっていようと思う。






〜Fin〜

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ