頂き物・捧げ物等

□拍手文
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(武州時代)




「十四郎さん」




隣で柔らかく微笑んで俺を見つめる。



コイツに名前を呼ばれると、まるで身体が麻痺するように不思議な感覚に陥るのは何故か。



胸の奥がぎゅっと締め付けられるような、こそばゆいような。遠い昔にどこかで感じた事のあるような懐かしい感覚。



それと同時に沸き上がるコイツを抱き寄せたいという感情。甘い痺れ。



今までこんな事は感じた事はなくて、それを近藤に自分は何かの病なのかと話したら「青春だな」と笑われた上、答えにもなっていないような返答。




こっちが困っているのに笑う事はないんじゃなかろうか。青春だと笑われたってこっちには理由に見当もつかないが、バカにされてる気がしてそれ以上は問わなかった。





(多分、今俺の前で笑っているコイツに話してもきっと同じ)





それに、ミツバには俺の事で余計な心配を掛けさせたくはない(身体にも響くだろうし)






「十四郎さん?」


「…ああ、」


「どうかしたんですか?」




きょとんとするミツバに、反射的に視線を反らしてしまったのがまずかった。


誰でも話の途中でそっぽを向かれればどうしたのかと気になってしまうだろう。


反らした後に激しく後悔。あろう事か、心配そうに顔を覗いてくる。





「───っ、」






刹那。






至近距離に、彼女の淡い色素の大きな瞳。




心配そうに見つめてくる彼女に、ドキリとした。




「大丈夫ですか?」


「あ、ああ」


「…良かった」






至近距離での柔らかな笑顔。





理由は解らない。だが顔は熱を持ち、ドクドクと激しく胸を叩く心音。




ああ、やはり自分は何かの病なのかもしれない(だってこんな状況にも関わらず彼女を抱き締めたいと思うなんて)







無自覚な恋患い。
(この病の正体は、)







この甘く痺れる病の正体に気付くのは、もう少し後の話。






Fin




────────

へたれ(というか初?)な土方さん。

自分の気持ちに気付かない無自覚な土方さんって素敵^^



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