頂き物・捧げ物等
□拍手文
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(檜佐木誕)
"誕生日おめでとう"
それは毎年。その日にあるのが当然のようにそこにあった言葉だった。
朝陽で滲む視界。既に昇った太陽が寝起きの瞳には眩しくて、ゆっくりと細めた。どうやら何か夢を見ていたようで、全身嫌な汗をかいている。そしてこれまでに無い程に怠かった。
怠い。だが体調が悪いかといったらそうではなくて、きっと気分的な問題だ。体調は万全。今年は風邪だって引いちゃいない(勿論馬鹿だからとかいうふざけた理由ではないが)
夢の残骸が残っているのか、まだ頭がボーッとしている。今日は何日なのか。そして何の夢を見ていたのだろう。先程からそこで思考はストップしたまま。
(……あ、)
考えが疑問と結び付いて、ゆっくり頭が回転。ああ そうだ。今日は、
(隊長が居なくなってから初めての)
(俺の、誕生日)
毎年毎年。
必ずこの日にはあった彼の言葉が、今此処には無い。
此処に無いという事が、段々と当たり前になっていってしまうのが怖くて
(隊長、貴方にはどう映っていたんですか)
(この世界は、どう映っていたんですか)
目が覚めたら、直ぐそこに在るんじゃないかと。
あれは自分が見た悪夢だったんだと、何度思っただろう。
それを嘲笑うかのように。それでもやはりこちらが現実で、夢は夢でしか無く。
(そうだ)
懐かしい夢を見た。
きっと東仙隊長、貴方が此処に居た。
東仙隊長に祝福の言葉を掛けられた。隊員達にもたくさん、たくさん。
(でもそれが当たり前だったあの日々はもう想い出でしかないんですね)
じわりと目元が熱くなり何かが零れてしまいそうで。手の甲で強く強く、押さえ付けた。
夢と現実の狭間で
(未だ取り残されもがく俺が居た)
Fin