頂き物・捧げ物等
□拍手文
27ページ/27ページ
(父の日/万事屋)
ある日の万事屋での出来事。
ある少年は台所で昼食を、ある少女は居間で何やらフンフンと力強く手を動かしている。
そして此処の責任者である天パ糖分中毒の男はというと、その少女のほうを気だるい濁った瞳でジーッと見つめていた。……いや、強制的に見つめざるを得ないと言うべきか。
「銀ちゃん銀ちゃん」
「…何ですかー神楽ちゃん」
「もっとキリッとした顔してくれヨ」
「………神楽ちゃん神楽ちゃん、この状況わかってる?」
「おうヨ」
「………」
そう、今の銀時の状況は────
「いっちょ主人公の"ふうかく"ってヤツを見せてくれアル」
───ソファーに座って前を向いたまま、頭だけ髪を無理矢理引っ張られて少女のほうを向いている。
首を回して後ろを見ているのならまだ良い。だが後ろから引っ張られている為、首をソファに預けた状態で後ろを向いたまま、少女の馬鹿力で固定されているのだ。
そりゃあもう無理な体制をしているものだから、首も「ゴキッ」と嫌な音を立てる訳で。
ついでに言えば銀時からは少女は逆さまに見えるので、少女が何をしているのかは全く見当がつかない訳で。
「……」
「あっ、その顔良いよ〜銀時ちゃん綺麗よ〜!でもそろそろもうちょっと凛々しい表情も欲しいかな、あと視線をもう少しこっちに送ってくれると……」
「どこのカメラマンだテメェはァァァア!!!」
遂に耐えきれなくなったのか、盛大な音を響かせて銀時専属のカメラマン──もとい、神楽の頭をはたいた。
敢えて効果音を付けるならば、「スパコーン」である。
「いってー」と頭を押さえて唸っている少女に構わず、頬を鷲掴む。
「テメェ、さっきから何事だコルァ。おかげで銀さんビミョーに首が痛くなっただろーが」
「ものっそい痛い訳じゃないんだろ?だったら良いネ、不幸中の幸いアル」
「どこが不幸中の幸い!?つーかビミョーな痛みをナメんじゃねーぞ?ものっそい痛いよりジワジワ来るからより厄介で陰湿なんだよ!!対処の仕様がねーんだよ!!」
「ちょっ、臭い臭い。加齢臭がするから離せオッサン」
「んな訳ねーだろ銀さんまだ若くてピッチピチだから!!加齢臭じゃなくて汗の臭いだ多分!!…よって、俺をオッサン呼ばわりしたお前には罰として"銀さんの甘い息吸引"の刑を与える!」
「ギャー!くーさーいー!助けてぇぇぇ」
「ちょ、何なのこの子そんなに臭いの?……新八ー、俺もう心がズタボロなんですけどー」
"俺に砕けちったガラスハートに効く薬をー"なんてふざけた言葉を台所にかけると、案の定"んなモンあるか!!"との応答。
…今日もツッコミの調子は良好のようだ。
「全く…何からかってんですか。あんまりいじめたらダメでしょ、可哀想ですよ?」
新八が台所から大きな皿を持ってやってきた。香ばしい醤油の良い匂いが鼻をくすぐって胃を刺激する。神楽が「キャッホゥゥウ!」と勢い良く席に着いたので、銀時もそれに習って席に着いて皿を覗いた。
今日のお昼は焼きうどんのようだった。どうやら昨日俺も一緒に買いに行かされた特売のうどんが化けたようだ。なるほど、まとめ買いしたのは安かったからか。
「別にいじめてねーよ。つーか逆だろ逆、俺がコイツにいじめられてんの」
「……言ってて恥ずかしくないんですか、ソレ」
「ほっとけ」
とにかく先程の乱闘で胃が限界だ。手っ取り早く3人でいただきます。うどんにより多く有り付こうとする猛獣と格闘しながらも、箸を進める。
「ところで、さっきは一体どんなことで喧嘩してたんですか?ずいぶん盛り上がってたけど」
皿に残った焼きうどんのキャベツに箸をつけた時に、眼鏡少年がこんなことを聞いて来た。無論銀時としては忘れたいことなので押し黙っている…と。
大皿にあった焼きうどんのほとんどを胃袋に収めた少女が、立ち上がって何やら楽しそうに新八の耳元で話をしている(いわゆるひそひそ話ってヤツだ)。
「えっ、本当?」
「ウン、つまりはそういうことヨ」
先程のことを蒸し返されるのももちろん嫌だったのだが、今はそれよりなんだか仲間外れにされているような気分で何となく面白くない。会話に時折笑い声が含まれると、銀時は無意識のうちに眉間に皺を寄せた。
(…なんっか、面白くねー)
「あ、銀さんすみませんのけ者にしちゃって!!」
「プクク…銀ちゃんいい歳していじけるなヨ、悪かったアル」
無言で不機嫌オーラを出していたのに気付いたのか、直ぐに新八は謝ったから良い──が、神楽の方は半分馬鹿にしているのが明らかだ。何だあのガキ酢昆布全部食ってやろうか。
なんて、また低レベルな仕返しを考えている──と。
「ぎっ、銀さん!今日は何の日か知ってますか!?」
「…あ?今日?」
「そうヨ!!今日は何の日でしょーか?」
慌てた新八と神楽の声に一瞬停止する怒り。
今日?
俺の誕生日?
…な、訳ないよな。まだ早過ぎる。
かといってクリスマスな訳でもない。
じゃあ何の……あ、不燃ゴミの日?
6月に俺に関係してるイベントあったっけか?
結局コレだと思う答えに辿り着けずにあーだのうーだの言いながら悶々していると、意味ありげに二人は顔を見合わせて笑う。
「ハイ、銀さん時間切れです!」
「フフフ…答えを聞いてひれ伏すが良いネ!!!」
「「正解は───」」
6月の第3日曜日!
"父の日"でしたー!
「父の日」
あまり耳に慣れず自分には縁がない言葉に驚きが隠せずに口をあんぐりと開くと、子供達はニッと笑った。
「いつも銀ちゃんには世話になってるからな」
「二人で何かプレゼントしようって神楽ちゃんと言ってたんですよ」
まあいつも世話をかけられてるのはこっちな気もしますけど、なんて生意気なことを言って楽しそうに笑うものだから。
無意識に口角が緩むのも、無理はないのだろう。
「なーにが世話かけられてるだ。銀さんは心が広いから普段言わねーけど、ガキの世話してんのはこっちなんだよ」
ポンッ。
ガキ共の頭に手を乗せて、わしわしと乱暴に髪をかき回す。
「だから、今日1日銀さんを労れガキ共」
嬉しそうに顔を上げた二人と目が合う。
「ウン!」
「はい!」
…今自分はちゃんと普通の顔で居るんだろうか。口元が情けなく緩んでいたり、目頭が熱くなっていたりはしないだろうか。
何とも言い表わし難い温かな何かが胸に込み上げて、分からなくなってしまったから。
(子供二人も育てた覚えはねーぞ、ばーか)
Wonderful・Family
(一生離してやるものか!)
(…で、プレゼントは何)
(今日は奮発して夕飯にパフェを作ってあげます!)
(マジでかーッ!?)
(私からはさっき描いた銀ちゃんの似顔絵アル)
(さっきのはコレか!何この角度普通正面から描くだろ!?ふざけんなやり直せェェ!!)
Fin
───────
ビバ、父の日(^^*)
やっぱり万事屋は家族です♪
父の日記念(?)でこの拍手文はフリーなので、お気に召しましたら是非☆←
このあと銀さんは肩たたきをして貰ったり似顔絵を貰ったりパフェを食べたりと至れり尽くせり。
幸せな万事屋が好きです^^
しかし、書き方忘れちゃってるなぁ…´`
.