頂き物・捧げ物等

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終礼のチャイムと同時に一斉に教室の扉に向かってなだれ込む生徒達。いつもの光景だがこれが明日、期末テストを控えた高校三年生のとる行動とはとても思えない。理由なんてどうせ早く家に帰りたいとかゲームしたいとか中二男子みたいな思考だろ。

まぁ俺も同じだけどねィ。


その中にいつもならその中二たちの先陣を切って教室を飛び出す筈のピンク色が無いことに気がついた。

あれ?今日学校に来てたよな?もう帰った?



教室を振り返ると椅子に一人ポツンと座って机と睨めっこしながらじっと座るピンク色を見つけた。授業以外で大人しく座ってるなんてどうしたんだアイツ。具合でも悪いのか?


「ようチャイナ。何やってんでィ」


少し心配になって覗き込んでみると机の上にはプリントと教科書が広げられ手にはシャープペンが握られていた。

え?何やってんのコイツ


「…勉強」


…へ?

「……勉強だヨ」

今何つった?

「だから勉強…」



………まさか。


もう一度机を見てみる。あるのはプリントと教科書、そして手に握られらシャープペン。



「冗談だろィ…こりゃ明日天変地異が起きるぜ」



「う、うるさいアルナ、ワタシだって勉強すんだヨ!悪いカ!」


「悪いでさァ。地球が滅びたらどうすんでィ」


「オイィ!ワタシを何だと思ってるアルカ!」


ガンッ、とシャープペンを握った拳で机を叩きバカと付け加えられた後、チャイナは視線をもとのプリントに戻して再び問題を解き始めた。


コイツが勉強嫌いなのは俺が一番よく知ってる。二人してテストで0点とって一緒に職員室で説教受けたからな。教頭のハゲが怒鳴り散らしてたのを二人でボッコボコにしたっけ。


そんなチャイナが勉強するんだ。きっと何かあるに決まってる。例えば、赤点なかったら酢昆布奢ってもらえるとか、肉まん奢ってもらえるとか。どうせ銀八に物で釣られたんだろ。だが残念だったなチャイナ。俺なんて何でもするからテスト真面目に受けてくれって言われたんだぜィ。俺のがすげぇだろ。


なんてことを心中で思っているにもかかわらず、目の前のピンクは相変わらずプリントとにらめっこを続けている。暇だったんでじっと観察していたらあることに気がついた。




「なぁ、」

「何だヨ」

「手、さっきから動いてないんだけど」

「…………」

「先が思いやられるねィ」


「お前に言われたくないネ、万年赤点組が」

「そりゃおめぇもだろうが」

「英語は得意アル」

「俺だって国語は得意だぜィ」


俺がその言葉を放った瞬間チャイナが目を真ん丸に見開いて「まじでか!?」と勢いよく立ち上がった。若干目が輝いているのは気のせいだろうか。あまりの勢いに思わずつんのめりそうになる。

つかめっちゃ近いんですけど。


「お前国語得意だったアルか!?」

「え、まぁ…」

「まじでか!?」


チャイナがさらに目をキラキラさせながら距離を詰めてきたので俺が自動的に後ろへのけ反る形になった。

わー、なんかちゅうできそう。


「ならこれ教えて欲しいネ!」


そう言ってチャイナのかわりに突き出されたのは先程机の上にあったプリント。少し残念に思いながらそれに目をやるとあったのは日本語の羅列。どうやら国語の問題のようだ。当然、回答欄は見事に真っ白。



「国語、苦手なんですかィ?」


「そうヨ。だから教えて欲しいネ」



留学生だから国語が苦手ってんなベタな。しかも英語得意とか知らなかったんですけど。



「別にいいけどねィ…そのかわり条件がある」


「な、何アルカ」



「アンタ、さっき英語得意って言ってたよなァ?」


「…言ったけど……」



バッグの中からプリントを取り出してチャイナに突き出す。



「だったら、俺にも英語教えろィ」



俺は国語が得意で英語が苦手。
チャイナは英語が得意で国語が苦手。
互いに利害が一致するなら協力するのが当然だ。それに、



「そんなことか。お安いご用ネ!英語なら任せろヨ!だからコレ、早速教えるヨロシ」


「へいへい。問一からでいいですかィ?」


「おうよ!よろしくアル」



これから一緒に勉強する口実にもなる。

でもどうせなら、



「あ。あとそれから、」


「ん?」


「俺の事は総悟と呼ぶように」


「はっ!?なんでヨ!」


「いつまでもお前とかサドとか言われるの気に食わないんでィ」


「んなっ…だ、だったら、そ…総悟もチャイナとかアンタとか呼ぶのやめろヨ」


「じゃあ神楽って呼ぶぜィ?」


「す…好きに呼べばいいダロ!」




口実なんていらない関係になるのもいいかもしれない。




なーんて思う、今日この頃。





Fin


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