頂き物・捧げ物等

□不器用なサンタクロース
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師走二十五日、快晴。

ヒューッ

毎朝、雨戸を開ける度に入る風で、
お妙はいつも季節を知った。


「今日は一段と…」


寒い、と言う言葉が、口の中で溶けるように消えた。



…庭に、見覚えの無い焚き火が1つ。

そして、見覚えのある、サンタクロース姿のゴリラ。


「あっ!おはようございます!お妙さん!!
いやー、本当に寒いですねぇ。
あまりにも寒かったんで、焚き火で暖取りながら徹夜で待ってました!お妙さんも入ります?
…あ!
お妙さんの好きなバーゲンダッシュもありますよ!?」



お妙はニコニコと笑みを浮かべながら、焚き火に近寄った。


「あら、あったかそうねぇ…」


瞬間。

焚き火が凍る気がした。


「って…、




ウチは人気ゲーム発売日のおもちゃ屋かァァァァ!!!」
「ぐほぉあ!」



お妙の足が、近藤の頬に、つま先からめり込む。


勢いで倒れた近藤の頭に片足を乗せ、グリグリと踏みつける。


「…で?、他人の家の庭で焚き火しながら、
何で徹夜なんかしてたんだ偽サンタクロースさんよォ?」

「だって…、お妙さん家、煙突無いんだもん…!
折角、プレゼント持ってきたのに…!!」

「ふーん…、じゃあ…、
…他人の家に勝手に上がるつもりだったのねェ…。



ポストにでも入れとけやァァァ!!!」



鈍い音と共に、塀の向こうへ近藤は消えた。



「…もう。火事になったらどうしてくれるのよ…。」


白い足袋は土色に染まって、とても美しくない。

…と、足元に、

綺麗に包まれた小さな細長い箱があった。


“お妙さんへ”

と丁寧な字で書かれた、小さなカードが付いている。


…落としていったのか、
それとも、わざと置いていったのか。


「(…さっき言ってた、プレゼント、かしら…?)」


そっと開けてみる。


「…綺麗…。」


一本の簪(かんざし)がそこにあった。
飾りは、桜の花びらを思わせる色合い。


カードを開くと、

“メリークリスマス”でもなく、ただ、
『お妙さん愛用の着物に合う色を選んだつもりです』


とだけ書かれていた。



お妙は、

「全く…、」

と呟くと微笑んだ。


“素直に受け取れば良かったかな”という後悔が少し心の隅に生まれたが、
微笑んだまま、しゃがんで、その焚き火に当たった。






それは、あなたらしい私のサンタ。








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