頂き物・捧げ物等

□Sunday
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カーテンの隙間から射す朝日の光が顔に当たって俺は目を覚ました。

「・・・・・・朝か」

欠伸を一つして、ベットから上半身を起こす。目覚まし時計を見ると時刻は12時を回っている。
寝すぎたかと思ったが今日は日曜日だし、バイトは入ってないから大丈夫だろう。今隣ですやすや寝ている恋人もバイトはないはずだ。


「ん・・・・・・」


どうやらこっちも目を覚ましたようだ。


「おはよう、水野」


目を覚ましたばかりの水野の顔を覗き込みながら言うと、目を擦りながら笑顔で「おはよう」と返ってきた。


高校を卒業してから俺と水野は同棲をしている。
水野と同棲をしようというのは高校に入ってからずっと考えていて、それは一緒に居たいと言う気持ちからきていた。


高校は残念ながら別々になってしまい、会う回数も中学校の時よりはだいぶ少なくなっている。それが同棲をしたいと思った始まりだった。


高校に通っている間に水野と同棲をしたいという気持ちはあったがさすがに高校生同士が同棲生活なんて、いくら付き合っていてもまず親が許さないし高校にばれたら大変な事になる。

だから高校に通う三年間、同棲したい気持ちを抑えてきた。そして両方が卒業式を終えた後、俺は水野に「同棲しようと」告白する。

水野は顔を真っ赤にしながらも快くOKを出してくれて、そこから俺達の同棲生活は始まったのだ。

「今日はいい天気だね」


朝食のトーストをかじりながら水野は言う。その言葉を聞いて窓を見ながら「ああ」と頷いた。
確かに外は天気で、気温もいい。携帯から見た天気予報でも今日はずっと天気らしい。


「なあ水野。この後さ、夕飯の買出しに行かないか?」

「そうだね、ちょうど食材きらしてるし」

「じゃあ決まりな」


そう言って残り少ないトーストをかじった。
あれから洗濯物を干したり昼食の後片付けをしたりして近所のスーパーに着いたのは二時なった。
早速店内に入って買い物籠を取り二人で店内を回る。まずは一番近い野菜売り場に来て野菜を見る。

野菜を見る水野を見て俺はふと、呟いた。


「俺達さ、料理の腕だいぶ上がったよな」

「そうだよねー。高嶺君、同棲し始めたときは卵焼き焦がしてたし」


くすっと笑う水野に「お前もだろ」と軽く小突く。


当時俺達は料理が本当駄目だった。水野は見た目は綺麗だが味が壊滅的なほどに駄目で、そういう俺は全てにおいて駄目だった。
料理は交代制でやってたけど、失敗が多くてコンビニ弁当によくなっていた。このままではいけないと二人で料理の勉強をしたっけ。

本当に大変だったけど今思うと二人一緒に二人三脚で上達していけたのはかなり嬉しい。



「今日はどうしよっか」

「そうだな・・・・・・カレーにでもしようか」

売り物のジャガイモを手にとって水野に言った。すると水野は心配そうな顔をする。


「・・・・・・言っておくが今はちゃんと作れるからな、カレー」

「・・・・・・そう、なの?」

「作れるからなっ」


中学の時のカレー作りは本当黒歴史と化してる思い出だ。当時の同級生と会うたびにカレーの話をされたり・・・・・・散々だ。
でも今は少しだが料理もできるし、昔のように冒険しなければ大丈夫だろう。それに、


「水野も一緒に作ってくれるんだろ?」

「勿論だよ」


水野も一緒に作ってくれるのなら大丈夫さ。水野も昔は料理駄目だったけど、かなり上達して美味いんだ。


「それじゃあ、ジャガイモと人参と玉ねぎと・・・・・・次はお肉だね」

「水野、20分待つか」

「え?」

「豚肉のセールがあるみたいだ」


後ろに居た恐らく近所のおばさん二人の会話で今日、20分後に豚肉のセールがあると話していた。
そうだとしたらこのチャンスを逃すわけにはいかない。今は不景気だから少しでも節約しないと。


「うん、それじゃあその間カレールーとか買ってくるね」

「ああ。豚肉は任せておけ」


そう言うと水野は「がんばって」と言い残し残りの材料を買いに行った。その間俺はセールが行われるのを肉のコーナーで待つ事にした。

きっと人数はかなり来るだろう。その人数をかわしつつ豚肉をゲットするには、このアンサー・トーカーの力を使うしかない。確実に力の使いどころを間違ってると言われそうだけどいいじゃないか。

(決戦まで後20分か・・・・・・)




「高嶺君、大丈夫?」

「・・・・・・ああ」


住んでいるアパートへの帰り道、水野が心配そうに俺に訪ねた。
あれから決戦を20分待ってセールは始まり、ボロボロになりながらもなんとか豚肉は手に入れることができた。アンサー・トーカーの力を使っても主婦相手には無力に近かった。なにあの迫力と熱気。

あの決戦を思い出していると水野が楽しそうな声で「カレー楽しみだね」と言った。

「失敗しても怒るなよ」

「大丈夫だよ、高嶺君なら」


冗談のつもりで言った言葉に水野が微笑みながら、自信を持って答える。その言葉と表情に俺は不覚にも顔を赤くした。


「どうしたの?」

「あ、いや・・・・・・」


本当の事を言うわけにもいかず顔をそむける。「どうしたの?」と再び聞いてくる彼女に俺はとっさに手を差し伸べた。


「・・・・・・?」

「手、繋ぐぞ」

・・・・・・俺は誤魔化すのが下手だと実感した。なんだよ、手繋ぐぞって。こんな誤魔化し方があるか。

自分の中でそう言い聞かせていると水野は俺の手を握った。それに一瞬ぽかんとした表情を俺がすると水野は笑いながら言う。

「手繋いで帰るんだね?」

「・・・・・・ああ」


今日はだいぶ疲れた休日だったけど、たまにはこんな休日もいいかもしれない。
今度の休日は水族館にでもデートに行こうかと夕飯を食べてから聞いてみるか。


そんな思いを胸に秘めて、握られた手をぎゅっと握り返し俺達は止めた足を再び歩めアパートへの帰り道を歩いていった。


end






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