頂き物・捧げ物等
□兎だまし
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「あ。」
「むおっ。」
残り一本だけの新作アイスに手が伸びたのはほぼ同時。
ふっくらとした小さな白い手と、成長期の少年特有の指の長い手が、ガッチと一本のアイスを掴む。
「おい、どう言うつもりだァ。」
先にメンチを切ったのは沖田。
続いて神楽も負けじとメンチを切る。
「お前もどう言うつもりだコラァ。」
二人はアイスを手に持ったまま「あん?」と睨み合う。
後方で順番を待っている子供達が皆顔を青ざめさせて遠退いて行った。
しかしそんな事を気にするような彼等ではない。
「さっさと離しやがれクソガキ。こいつは俺が先に見つけたんでィ。」
「いーや、私が先に見付けたネ。さっさと離すヨロシ。」
回りの目を気にする事なく駄菓子屋の前で言い合いを始める二人。
二人が掴んだアイスがミシミシと音を立てる。
「テメェは酢昆布でもかじってろィ。何で今日はアイスなんでィ。珍しく100円貰えたのか?」
「わかってんじゃねぇカ。今日は100円貰えたから奮発しようと思ったネ。100円だぞ100円。すげぇダロ。」
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