頂き物・捧げ物等

□恋を知らない君のために
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それは学院からの帰り道。
橙色に染まった道を踏みしめては、ため息をついた。自分の肩からずれ落ちそうな鞄をもう一度引っ掛け直した"神田ユウ"という青年は、極めて不機嫌であった。

その原因は、彼女である。




「何をそんなに拗ねてんだよ」




…返答無し。
早歩きで前を行く幼なじみに眉を寄せた。こちらが先程から何度か声を掛けているというのに、全く見向きもしないのである。最も、返事をしなくなったのは学院から出る前だが、こちらは思い当たる節もない訳で。理由も無しに無視をされるということは、元々気が長いほうではない神田にとって我慢ならないことなのだ。


うんともすんとも言わない彼女。遂に痺れを切らし、舌打ちをすると前方を行く幼なじみの腕を掴んだ。



「…!」

「…無視してんじゃねェ」

「……気安く触るな」



強い意志を持った目に睨まれてしまう。そしてその目に一瞬だけ怯んでしまい、思わず手を離してしまった。嗚呼、何をやってんだ。自分で自分に腹立たしく思い苛々しながら彼女を見据える(お互いに気難しい性格故、どちらかが譲らない限り睨み合わなくてはならないという面倒なことになってしまった)。

…だがしかし、そこは長年の付き合いである幼なじみの間柄だ。彼女の強い瞳の中から微かに感じ取ったのは、普段の彼女からあまり見ることのない"不安定な揺らぎ"だった。

頭を掻いて、神田は砕蜂からそっと目を逸らした。


神田自身、人の心には敏感ではなくどちらかといえば鈍いほうの部類にではある(本人は断じてそうは思っていないが)。故に周りに対し誤解があったりするのは日常茶飯事。だが彼女──砕蜂に対しては違った。それは幼なじみという長い付き合いだからか、それとも──。



「…何を苛立ってんだ」

「……」

「俺が原因か」




その言葉に砕蜂はハッとしたように顔を上げた。少しだけ、青年の声色が寂しげに聞こえて。



「……フン、何を拗ねている」

「拗ねてんのはテメェだろ」

「別に私は拗ねておらぬ。ただ少し、虫の居どころが悪かっただけだ」

「……チッ」

「貴様に言われる筋合いはない」


フン。
そっぽを向かれて吐かれた言葉はなかなかに辛辣だ。それが果たして心配していた幼なじみに対する言葉なんだろうか。軽く、傷付いた気がする(とはいえ、素直でない彼女のことはよく理解しているが)



「……貴様、どこぞの女子から恋文を受け取ったそうだな」




こちらを見ることなくポツリと呟かれた言葉に、思わず目を見開く。今、彼女はなんて言った?



「…あ?」

「この私を放って色恋沙汰とは良い身分だな」

「……おい、」

「全くもって腹立たしい奴だ。今まで誰が貴様の面倒を見てきたと思っている?」



「面倒見られた覚えはねェぞ」とか、「なんでそんなこと知ってる」とか聞きたいことは山ほどあるが。


…コレは。
この言葉には違う意味が潜んでいる、と期待しても良いのだろうか。


確かに、この前違う組の女子から恋文を受け取った。それは本当のことだ。だがしかしそれは直ぐに断った筈だし、返事はこういったのだ。


「他の奴を見るほど暇じゃねェ」…と。



無意識のうちに口角が上がるのが分かる。嗚呼、馬鹿な奴。昔からずっと想い続けてたのは、ずっと見てきたのは、目の前に居る幼なじみだけだというのに。


相手は恋愛に疎い砕蜂だ。
彼女が色恋に目覚めるまで、自分の気持ちに蓋をして押し殺しておくつもりだった。あわよくば疎い彼女に気付かせることが出来たら良いと、ずっと思ってきた。



(無意識に嫉妬したと受け取っても良いだろうか)



もう一度腕を引いて今から想いを告げたなら。
彼女はどんな表情をするのだろう。



「…妬いたのか?」

「っ、何を馬鹿なことを…!」



(…図星、か)




軽く色付いた頬に、確信。
早く彼女に次の言葉を言うべく息を吸い込んだ。





(想いを告げる言葉を並べて)





─────
金色木葉さま、お待たせ致しました!リクエストして下さった神田×砕蜂です(^-^)

私自身、作品を飛び越えたCPを書いたのは初めてのことでしたから、難しかったと同時に新鮮でした^^

幼なじみで甘、とのことでしたが…甘さが足りない気がする(苦笑)こ、こんな出来になってしまいましたが、宜しければお納め下さい(><)

リクエスト、ありがとうございました!!


(title/ポケットに拳銃)






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