Short Story3

□盲目故に見えるもの
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(何かの病に侵されたのだと、思う)



遠くで聴こえた叫ぶような狐の鳴き声にふと目を覚ます。睡眠を摂っていた間に汗をかいたようだ。ベタベタと服が身体にまとわりつく。嗚呼、不快。

時計を見れば時刻はまだ午前二時を回ったところだ。明日にはまた早朝から任務が待っている。失敗は許されない。まだまだ寝ることは出来ると冴えて閉じそうにない瞳を無理矢理に閉じてみる。直ぐに視界は闇に包まれた。


そうして思うのは、死ぬ瞬間もこの景色を見ることになるのだろうと言うこと。



ふと、何者かの気配を感じた。
よく調べてみればそれは見知った者の霊圧。

だが、何かが、違った。

いつの間にか寝室の戸が開いており、月明かりがその隙間から差し込んでいる。


なんだ。
この重苦しく暗い霊圧は。
私は、この霊圧の意味を知っている…?


よく薄暗い寝室。
月明かりの差し込むほうに目を凝らすと、戸の前には人影があった。寝室には入らず、戸の前で立ち尽くしている。


隙間からは、肩が覗いていた。



それを見て、全てを理解する。
嗚呼、この男はまた今宵も人を殺めて来たのだと。

ツン、と鉄の嫌な匂いが鼻腔を刺激した。




「入れ」




とにかく今は男をなんとかしなくては。そんな想いに駆られ冷静に声をかける。その呼び掛けに、男が戸の前でたじろいだように感じた。



「アカン」




静かな空間に響くは泣きそうな声。その声は少し震えているように聴こえる。

だがそれ以上に、とても荒々しい何かを感じた。




「今、この部屋に入ったら二番隊長さんを殺してまうよ」

「…抑えろ」

「止められそうにない」

「……」




この男は一体、何に苦しめられているのだろう。私はそれを聴く術を持たない。人とはいつも無力なものだ。



ただ、解ることは一つ。
この男は今、恐怖している。
自分自身に、恐怖を感じている。


怖いか市丸。
自分自身が。

先程聞こえた叫び声。
助けを請うていたのかもしれない。




「私が貴様ごときに殺されるとでも?」

「……」

「返り討ちにしてやる」




不敵に微笑む蜜蜂。
紅に塗れて月明かりに照らされた銀狐。そっと手を掛けその後は黒。


柔らかな銀髪に指を絡め
深く深くへ堕ちてゆく
(今宵、蜂は赤を纏う)






(それはもう一つの顔)




(ジレンマ様に提出)
素敵な企画に参加出来て幸せです。

ありがとうございました!



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