Short Story3
□ボクとキミを繋ぐのは
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電波と電波
繋がる端末
キミとボク
目には見えないそれはそう、
『キズナ』に、似ている。
"カーン"
真っ白い球体を弾いた金属の音。よく甲子園やら何やらで聞こえるその音に、自然と目線は空中へ。
まるで青い海に吸い込まれるように、ボールは天高く上がっていく。それをボーッとしながら黙って見上げていると、隣で大げさな歓声が上がった。
「…五月蝿いなあ」
「傷付くから漢字で言うなよ漢字で!つか、スゲーんだから仕方ねーじゃん!?まさか一高の野球部がこんなにスゲー部だったとはなぁ〜」
「どーせまぐれでしょ」
「だーかーらァ、まぐれでもスゲーモンはスゲーだろ?」
そう笑った君の笑顔が眩しくて目を細めた。キラキラキラ、僕にはとてもじゃないけど出来そうもない純粋な心からの笑顔。
純粋で、透明で、子供。
まっさらなスケッチブックみたいな舎弟(おっと、ここは笑うところ)
(羨ましいだなんて、思ったが負けだけど)
「なーそれよりさ、今日どっか寄ってかねー?」
「いいね、一護とチャドも誘おっか?」
「さっすが水色!そりゃ〜良いアイディアだ!…で、今奴らはいずこ?」
「今メールしてる。まだ教室みたいだけどあと5分で来るって。遅れたら罰ゲームって打っといたからすぐ来るよ」
「よっし、でかした水色ぉぉ!」
一直線に校門へ走り出す啓吾にため息。ゆっくりと背中を追いながら、先ほどまで見つめていた手のひらサイズの端末をチラリと見る。
(ねえ、知ってるかい?)
(この端末は世界と繋がってるんだ)
(いつでもどこでも世界中の誰かと繋がってる)
(だけどそんな実感はない)
家に帰れば一人きり。
ナナコさんを呼ばなければ寂しいだけ。世界と繋がってるとか、そんなことを考えたってあいた穴は塞がらない。
(でも知ってるかい?)
(いつでもどこでも繋がってるけど)
(今キミがこうして馬鹿なことをやってる)
(今キミがこうして笑ってる)
(それを知ることは出来やしない)
(キミと関わった、ボクだけ)
───そう。つまり、
「水色ぉぉ、早く来いよー!」
ふわりと微笑みを浮かべて答えた。
さあ。
数分後には慌てて駆けて来るであろう二人の友達を、ゆっくり話をしながら待っていようか。
(──いつも傍に居てくれて、ありがとうってこと)
「今行くよ」
Fin