Short Story3

□エイプリル・エイプリル!
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(夫婦)



夕飯時。
妻であるミツバが、やけに真剣な表情で土方を見据える。


いつもより近くなった視線に、なんとなく重たくなった雰囲気に。息苦しさを覚えて、額から汗が一滴。



「十四郎さん、」

「…どうした」



あまりに真剣な瞳で見つめるものだから、瞬きも出来やしない。
夫は妻のただならぬ気迫に押されて軽く怯みつつ、声を喉から絞りだした。


案の定それは、擦れたように自分でも聞こえて。



…やべぇ。俺カッコ悪い。



一体どうしたと言うのか。
何を言われるのかとヒヤヒヤしつつ彼女を見れば、頬をほんのり赤く染め、何やら口をぱくぱくと動かし…モジモジとひどく言いにくそうにしているではないか。




(まさか、俺何かしたか?)




冷や汗を流しながらもこれはただ事ではないと感じ、続きを促そうと彼女の肩に触れようとした時。




「赤ちゃんが、出来ました」





旦那様の口から、米粒弾が発射された。






え。



…え?



えーっと…え。え?え?え?





それはそれは、頭を鈍器で殴られたかのような──はたまた強い電撃を頭から食らったような──凄まじい衝撃が彼を襲った。頬をさくら色に染め、爆弾発言をした妻は本当に可愛く、思わず抱き締めてやりたくなる…とかそういう問題ではない。



それを聞いた土方の頭は真っ白になり、何も言葉が浮かんでは来なかったのだから。



しばらく呆然としていたものの、今だに照れ臭そうに自分を見つめている妻(しかも無意識に上目遣い)を見て、だんだんとことの重大さが飲み込めて来た。





(赤ちゃん………って、まさか、こっ、子供!?)




滝のように汗が噴き出る。




「おっ、おまままままま…!お前ソレ、あの、それって、つまりそのっ…」




思わず両肩を掴んで物凄く吃ってしまった。ああ、カッコ悪い。俺カッコ悪い。



俺ってこんなにヘタレだったっけ?




「…十四郎さん、」





するとどうだろう。
ミツバはゆっくりと伏せていた顔を上げて、俺を見る。

掴んだ肩が、小刻みに震えて……




「ウソ、です」

「……へっ?」




嗚呼、口からはなんとも力の抜けた情けない声。

とても可愛らしいウソをついた妻は、少し申し訳なさそうに笑みを浮かべた。



「ごめんなさい、今日は4月1日で「ウソをついても良い日」だって銀さんから聞いて…だから、何か出来たらなと思って…」

「……」

「それで、銀さんの意見を参考に…」

「…」





(テメェ万事屋コラァァァ!!!)



なんつーことを吹き込んでんだ!!絶対わざとだろコラ。あとでシメに行くから覚悟しやがれェェェ!



銀髪の男がニヤニヤと腹の立つ表情を浮かべている様子が頭に過った。




「怒ってますか…?」




おずおずと目線を合わせて来たミツバに、軽くたじろぐ。



目が合うとミツバは柔らかく笑って、「まさかそこまで信じるとは思っていなくて…ちょっと言ってみただけだったんです。…ごめんなさい」なんて良妻に本当に申し訳なさげに言われては怒る気にもならない。


否、元々怒る気などなかったが。
小さな可愛らしいウソ。これぐらい、どうってことはないのだ。



ただ、あれほど吃ってしまったのは事実。彼女に要らぬ誤解をさせたのではないか、なんて思う。誤解だけはきちんと解いておきたい。


別に嫌だった訳ではない。
ただ驚いてしまっただけで。




「いや、別に怒ってなんかねェよ。ただ…アレだ、ホラ。なんつーかホラ、驚いただけだ」

「そうですか…。良かった…」

「べっ、別にアレだぞお前、子供が欲しくないとかそんなんじゃないからな?誤解すんなよ!?」

「…ふふふ、わかってます」




幸せそうに笑う彼女に安心する──と同時に。

お互いなんともこっぱずかしい会話をしているのだということに気付いて、こそばゆい雰囲気に赤面したのだった。



Fin


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日記ログ。
エイプリルフールに乗り遅れた管理人が、悪あがきとして書いた代物。

初ップルな土ミツ+銀さんは最高だと思います(^q^)←





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