Short Story3

□ピコピコアンテナ注意報!
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※ギャグ
※神威兄さんがシスコン兼銀八大好き←



「ね、遊んでよセンセイ」


アンテナをピョコピョコさせて、あんまり見たくない笑顔を携えてソイツはやってきた。自分のクラスのホームルームも終わり、やっと一息ついたと思ったらコレだ。何なのこの仕打ち。頭がとんでもない色の奴にロクなモンは居ねェな…なんて自分のことを棚に上げるこの男の名は坂田銀八。

問題児が集まる3Zの担任である。


ニッコリと笑みを浮かべて近付いた男は自身のクラスのチャイナ娘の兄であり、れっきとした3Zの生徒である。何故だか分からないが自分はこの生徒──神威に気に入られているようだ。また面倒な生徒に好かれたモンだ…なんて思いつつ、ズレた眼鏡を押し上げる。


「また来たのか大食らい。先生は今中間テストの問題作ってんの忙しいの見て分かれボケ」

「ひっどいなあ、せっかく甘いもの持ってきてあげたのに」

「いただきます」


サッと出て来たのはケーキの箱。なんかもうどっから出したのとかんなモン学校に持って来ちゃダメだろとかのツッコミは無しの方向で。速答し物凄い速さでケーキの箱を掴んだ担任のその様子に、僅かに口角を吊り上げた。



「じゃあ何して遊ぼっか?」

「…お前高校生にもなって"遊ぼー"とか恥ずかしくないの」



口の周りに生クリームを付けた教師に言われたくない、と思っても口には出さない。何故ならばそっちのほうが面白いからだ。



「全然。恥ずかしいのは高校生にもなってガキみたいなアプローチしか出来ないアンタんとこの栗頭でしょ?」

「………。」


コイツはまた爽やかそうな顔してサラリと毒を吐く。今悪口を言われた(多分嫉妬も入ってる)ドSな王子サマを不憫に思いつつ、軽くため息。まあ人の恋路なんて知ったこっちゃないし、庇う気もないんだけれど。


(あとで覚えてろ…じゃなかった、覚えてて下さい。なんていう栗色の少年の声が頭の中で響いた気がした)


「……なんでいつも俺んとこくる訳?遊び相手なら他にもいるだろ、神楽とか」

「アイツは今難しい年頃だからネー、あんまりベタつくと怒るんだよ」


‥今サラリと爆弾発言された気が。嗚呼、コイツは正真正銘のシスコン野郎だ。意外とシスコンって意味では沖田と意気投合するのではないだろうか。



「何もベタつけとは言ってないでしょーが。極端な奴だなお前は。…つかお前家でアイツにそんなことしてんの?」

「阿伏兎も居るけどアイツはすぐ参ったっていうから面白くないし」


……無視かオイ。
少し腹は立ったがもう色々と面倒なので話は進めることにする。


「そりゃテメェと付き合ってたら命がいくつあっても足んねェしな。アイツも苦労してんですねー」

「という訳で遊んで」

「やなこった。お前の遊びは遊びに分類されないからね。軽く戦争だからな?ウォーズだよウォーズ。命のやり取りなんざ本誌で手一杯なんだよ進んでしたくなんかないの」


シッシッ。
追い払うように手をぴらぴらと振る。ンな化け物じみた強さを持つ奴と危険を伴う遊びなんかしたくない。絶対イヤだ。つか『という訳で』って何だよどんな訳?

その様子を見て、ピクリと口元を動かしたのを銀八は見逃さなかった。なるほど、ご機嫌斜めになりかけだ。しかしだからと言ってガキのご機嫌取りをする程、坂田銀八という男は面倒見が良い訳じゃない。



「──ヘェ、そんなこと言うんだ。そのケーキ食べたクセに」

「ハイハイハイ君のおかげで脳内の糖が増えてものっそい作業がはかどりそうだよありがとう。じゃあまたね二度と来んな」

「じゃああっちむいてホイしようよ」

「……神威くーん君人の話聞いてたー?何?何なのその頭についたアンテナ引きちぎって欲しいの?」

「まさか」


───が、神威にとってはそんなことどうでも良いのだ。銀八の意志なんて最初(はな)からそんなに気にしてはいない。大事なのは自分自身が遊びたいか遊びたくないか。

ニコリと先程よりも爽やかに微笑みを浮かべながら言ったつもりなのだが、何故か目の前の教師は口元を引きつらせた。…どうやら無意識のうちに「殺しちゃうぞ」のオーラを自身の背後に垂れ流しにしていたようで。

まあいいやとジリジリ近付きながら拳を振り上げる。それに合わせて銀八が後退りするのが面白くて、神威はクスリと笑った。



「じゃーんけーん、」

「ちょ、ちょっと待て話を…」



銀八が止めろと言わんばかりに両手を顔の前に出した瞬間、衝撃。



(………え、?)



気付いた時には既に、身体は窓の外に放り出されていた。




「ぎゃあああああ!!!」




その後奇跡的にかすり傷程度で済んだ銀八は、花壇に顔を突っ込んだまま神威に説教をすることになるのだった。





(命がいくつあっても足りない!)




(アリ?力み過ぎちゃった。先生生きてる?)
(神威くん神威くん、コレのどこがあっちむいてホイ?)
(俺流のあっちむいてホイ)
(ふざっけんなよ!!こんな無茶なスタントはジャッキーに任せときゃいいんだよ!!)
(少し休んだらまた遊んでね)
(誰が遊ぶかァァァ!!)







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