Short Story3

□陽だまりと君
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日に日に変化する身体。
それに呼応するかのようにあったかい気持ちと幸せが膨らんでいく。

今胸を張って言える。
幸せです、と。



「お兄ちゃん、おはよう」



部屋にある写真立て。
報告を兼ねて、その前に正座する。
左手は胸の前、右手は愛しいあの人の手を握りしめ、そっと写真の前に座る。そよそよと柔らかい風がカーテンを揺らす。一人きりの時は恐かったこの場所が、今はとても優しい空間に感じた。


すー、はー。
大きく深呼吸。
隣で小さく笑う声が聞こえた。



「あのね、お兄ちゃんに報告があります」



左手を滑らせたのは、まだ柔らかな腹部。写真の中の兄を見つめて、そっと息を吐き出すように言葉を紡ぐ。



「あたし、おかあさんになるよ」




* * * * *



「俺、認めて貰えたかな」


報告が終わったあと、散歩しようと提案したのは織姫だった。近所の公園に来た辺りで、ぽつりと呟かれた言葉に、ふわりと笑った。


「フッフッフ、何を今更。黒崎くんはお父さんなんだから当たり前ですぞ?」

「茶化すな井上…」



"お父さん"という単語が恥ずかしかったのか、手を顔に当てる。隠したつもりかもしれないが、耳まで赤くなっているので意味はなくて。そんな一護の顔を覗いて、あったかい気持ちになったのは言わずもがな。



「…認めて貰えたに決まってるよ。だって黒崎くんは、あたしの好きな人だもん」

「井上…」

「きっとお兄ちゃんもわかってるよ。黒崎くんとなら、あたしは幸せになれるって」



スッゲェ自信…なんて言いながらも照れ臭そうに俯く。こんな照れ屋な一面も好きなところの一つ。なんだかこっちまで恥ずかしくなっ、て誤魔化すように走り出すと直ぐに未来の旦那サマにに止められた。


「ばっ、転んだりしたらどうすんだ!」


うっすらと額には汗。
ごめんなさい、慌てさせちゃったね。ポツリと謝ると、そっと握られた手。ゆっくりと見上げれば、優しい瞳とかち合う。



「ゆっくり歩くんなら許す」


いつも見ていた筈なのに。
笑った表情は、いつもよりも大人びて見えて。



「く、黒崎く…」

「転ばねェように握っててやるよ」


そう言って笑って、ゆっくりと手を引かれながら歩き出す。熱を持つ頬と手に、幸せ過ぎてなんだか泣きそうになった。

ねえ、お兄ちゃん。
あたしの未来の旦那さまはこんなにも優しくて頼りになる人だよ。こんなにも幸せ。だから、大丈夫だよ。


空を見上げて心の中で呟いた声が聞こえたかのように、今までよりも温かくて柔らかな風が二人を撫でた。



(幸せになるんだよ、織姫)



大好きな声が聞こえた気がした。そっと目を瞑って、旦那さまの手をギュッと握りしめた。



(ありがとう、お兄ちゃん)




(きっと大丈夫、)







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