Short Story3
□初めまして、ありがとう。
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(一心と真咲)
俺は今日という日を決して忘れはしない。元気な産声を上げた自分の息子を初めて抱いたこの感覚を。決して忘れはしない。息子のこの温かさを、命の重みを。
(柄にもないな。こんな気持ちになるなんて)
「ふふ、もう父親の顔してる」
「…だといいんだが」
「大丈夫。きっと貴方は良い親になれるから」
「はは、真咲もな」
初めて抱いた我が子。
びっくりするぐらい軽くて小さくて、でも重くて。どうしようもなく不安になるぐらいだ。でもだからこそ、親になった俺らが護っていく。護らなくちゃいけない。
「どんな子供に育つかしらね」
「真咲に似て、美人になるかもしれんぞ?」
「ふふふ、男の子なのに?」
「はははは、そうだったそうだった!じゃあきっと強い奴になるさ」
「どうしてわかるの?」
「俺とお前の子だ。ちっとやそっとじゃへこたれんさ」
「うん、そうね…そうだと良いわね……」
そう呟いて、真咲は一筋の光を零した。その表情は我が子を慈しみ、眼差しは日だまりのように優しく降り注ぎ。
「幸せモンだな、俺は」
何時にも増して真咲の周りを取り囲む空気は淡く柔らかく。
「大きくなったら何になるかな」
「それはまだ早いんじゃない?」
「いーや?あっという間だよ」
「…そうね、」
将来何を追い掛けるのかはまだわからない。でも、何を追い掛けても良いわ。
どうか、健やかに。
逞しく、元気に。
無事にこの子が育ちますように。
「一護、」
(生まれてきてくれて、ありがとう)
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ある日の、両親の会話。