Short Story3

□浴衣と貴方と、
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カロン。
涼しげな音を響かせる足音に気分が高揚する。少しだけ、柄にもなくワクワクしている自分に気付いて、頬を軽く叩いた。


(ダメよ浮かれちゃ。調子に乗らせるだけだわ)



足を進める度に聞こえてくる太鼓の音。暗闇にボンヤリと浮かぶ赤い提灯の光。賑やかなその場所に、約束した人が居る。


着物はいつも着ているが、今は浴衣だ。浴衣なんていつ振りだろうかと考えるも、よく思い出せなかった。何となくいつもより背伸びした大人っぽい柄には特に意味はないけれど、シャラと揺れた簪に、口元の薄く引いた紅に。気付いてくれるかしらと無意識に考えてしまう自分が居た。



「お妙さーん!此処です、俺は此処に居ますよォォ!」



待ち合わせの場所に行くと、いい歳こいたゴリラがピョンピョン跳ねながらブンブンとこちらに両腕を振った。…そんな風にしなくても直ぐにわかったのに。思わず他人の振りをしたくなったが、此処は我慢。代わりに一発拳をたたき込んでおいた。



「ぐふっ…」

「あらどうしてこんなところにゴリラが居るのかしら。動物園に引き取って貰わなきゃ」

「いやいや、俺ですよお妙さん!ゴリラはゴリラでも今日貴方と約束したゴリラです!近藤です!!」

「わかってますよ」

「‥え、?」



クスリと微笑めば不思議そうな顔をした待ち合わせ相手。なんだか恥ずかしくなり、顔を見られたくなくて近藤の顔を踏み付けた。









(じゃあお妙さん、何をたべましょうか)
(まずはりんご飴かしら。新ちゃんの分もお願いしますね)
(喜んで!!)


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