Short Story3
□大晦日、こたつにて。
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(坂田家)
「…オイ、お前もうちょいそっち行けや」
「いやアル。銀ちゃんこそそっち行けヨ」
「んだ?やんのかコルァ」
「ちょっと、喧嘩しないで下さいよ。もうすぐ年が明けるのに最後ぐらい仲良く過ごせないんですか」
毎年恒例コタツで蜜柑。
テレビでは紅組と白組に分かれて歌手が競い合っている今日この日。少しでも暖を取ろうと冷たい足をくっつける少女を少々欝陶しく思う。…というより、冷たい足が触れることによりせっかく温まっていた足の温度が冷えていくのだ。それに身震いしながら、台所から呆れたように顔を出した新八を軽く睨んだ。
「他人事だと思いやがって。クソ寒い日に足に氷をくっつけるようなモンだぞこんなん。お前も一回やられてみろ、シャレにならねェからなマジで」
…くっつけるならコタツに潜っている定春にくっつければいいものを。
そう呟けば、「寝てる定春の邪魔したくないネ」なんて神楽は言う。眼鏡の青年は苦笑いを浮かべると、台所の奥からお盆に乗せた蕎麦を持って来た。
「終わり良ければ全てよし、って言うでしょう?」
それに…神楽を見ながらそう言い掛けて口を閉じたのは新八だ。二人は何が言いたいんだ、という視線を送るが口にはしなかった。何故ならふわりと醤油の良い匂いが鼻をくすぐって、グウと腹が鳴いたからである。
その音が耳に届いたのか、新八はクスリと笑った。どうぞ、と温かな蕎麦が入った器をそれぞれの前に置く。
「あ、蕎麦の上になんか乗ってるアル」
「んな金どこにあったんだぱっつぁん」
「何もないのもアレなんで、冷蔵庫にあった半端な野菜でかき揚げ作ってみました」
本当だ。
よく見てみれば、ニンジンだったりネギだったりと冷蔵庫にあった食材である。冷蔵庫の整理にもなって一石二鳥でしょう?なんて言う眼鏡の青年。本当に主夫の知恵がついたものである。俺らの教育の賜物だな、と神楽と目を合わせニヤリと呟いてみれば「アンタらゴロゴロしてただけだろ」ピシャリとツッコまれた。
「さ、早く食べましょ。さっさと食べないと麺がのびちゃいますよ」
「そーだな。んじゃ、いただきまーす」
銀時の言葉に合わせて、三人一緒に手を合わせる。いただきますの挨拶を済ませたあと凄い勢いでかき揚げに噛り付いたのは神楽だ。よほどお腹が空いていたらしい。銀時は麺から、新八は汁から。これほどまでにはっきり食べ方が分かれるものなのかと、銀時は二人を見て小さく笑った。
「んー、かき揚げが汁を吸ってごっさ美味いアル!」
「ほー、そりゃ良かったな。腕を上げたかぱっつぁん」
「そんなこと言ってもおかわりは出ませんよ」
「……ちっ」
「あ、銀ちゃんのかき揚げのほうがデカイ気がするネ。交換しろヨ」
「ざけんなよクソガキ!!んな食べ掛けでガキのよだれ塗れなかき揚げと誰が交換するか!俺のかき揚げは俺専用なんですう〜」
「ほらほら喧嘩しないで…って何すんの神楽ちゃん!!」
「どうせ眼鏡に吸収されるんだからお前にかき揚げは不要ネ!大人しく献上するヨロシ!!」
「眼鏡に吸収って何!?つか、作ったの僕なんですけど!僕だって食べる権利あるだろうが!!」
ギャーギャーと騒ぐ3人の側で、定春が欠伸をひとつ。
今年も坂田家は賑やかである。
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結構前から書きかけていた文を完成させてみた。
こんな万事屋が好きさ^^*
皆さま、素敵な年末をお過ごし下さいvv