Short story2

□明日世界が滅ぶとして
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(金魂設定)






「あら、またいらっしゃったの」


今宵もまた姿を見せた豪快な作りの顔を持つ男に、貼り付けた営業スマイル。隠しもせずに舌打ちをすると、目の前の男は肩を竦めて困ったように眉を下げた。


「ひどいなあ、コレでも忙しい中抜けて来たんですよ」

「わざわざ抜けて来いだなんていつ頼みました?」

「…はは、流石はお妙さん。手厳しいなぁ」


どんな嫌みを言ってもこの男──「近藤さん」はさらりと受け流し、何事も無かったかのように笑う。いつもそうして微笑むものだから、本心なのか何なのか。その笑顔の中に何かを隠されているような気がして、あまり好ましい相手ではないのだ。逆に掴みにくいと感じてしまうのだから、厄介な人だと思う。



「今日も仕事の愚痴を言いに来たんですか」

「まさか。貴女に逢いに来たんですよ」



首もとのスカーフを緩めながら、平然とそう言う。(嗚呼何を馬鹿なことを)(見え透いたウソはやめてちょうだい)(貴方が此処に来るのは、そんな浮ついた理由じゃないでしょう)(貴方は、貴方は──)



「どう口説けば、手に入れることが出来ますかね?」



作ったばかりのアルコール。
グラスは両手で押さえたまま、目線はグラスに落としたまま。探るような声色に、ピリリと空気が重くなる。

そんな空気を裂くように、中に入った氷がカラリと音を立てて揺れた。




「何度来ても無駄ですよ」




(明日世界が滅ぶとして)



貴方が私を選ぶとしても。




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むーちゃん主催、近妙企画への提出作品。

マフィアの女ボス神楽と繋がってると睨んで接近を試みる近藤さんと、何も言うつもりもないお妙さん。甘さが全くない大人っぽい話が書きたくて。

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