Short story2

□守ると決めた君の手は いつの間にかすり抜けて、
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いつからだろう。



こんな風になってしまったのは




キミを見つけた時から、ボクが護ると決めていたハズだったのに。







『ギン!』


『どないしたん?そない慌てて…』

『干し柿貰ったの!!好きでしょ?』

『おおきに』




あの頃はこうして二人で笑い合った。


捨て猫のような彼女を見つけて、干し柿を与えて。


そこからは毎日一緒だった。




キミに誕生日を与えた


キミを悲しみから護りたかった


それは嘘なんかじゃない。



ずっと一緒にいれたらどんなに良かっただろう。



(でもそれは無理だったけれど)




彼女とボクは、最初から違っていた。



自分とは違い、明るい彼女。キラキラと太陽のような女の子。



こんな世界の中で自分のように汚れて欲しくない。そう思った。



こっちに来たら危ないから。




『…っ、』


『乱菊…!?』





ある日、家に帰るとあの子が泣いていた。



時々居なくなるボクに、
"行かないで"と心で訴えているように聞こえて。



『どないしたん…!?』



『なんでもない…、ただ目にゴミが入っただけだから…』




いままでずっと一緒だったのに、彼女の泣き顔を見たのは初めてで。


酷く驚いて、ボクはどうしたら良いのか解らずにただただ頭を撫でる。



(…違う)




違う



本当は知っていた



気付かぬフリをしていたんだ。




ボクが居なくなった後、彼女が零していた涙に。



振り返る事が、どうしても出来なかった。




(ねぇ、どうしたら良いのかな)




どこですれ違ってしまったのか。



何がいけなかったのか。



"…ねぇ、"



あの頃のように笑い合う事は、もう難しくて。




"アンタ一体、何処に行こうとしてるの?"




いつだって悲しませなくなんかなかった。



"アンタ一体、"



でもいつでもあの子の涙の原因はボクにあって。




"何処へ行きたいの―――"



それでも狂い出した歯車は止まる事を知らず





『さいなら 乱菊』


『…!』


『…ご免な』





本 当 は キ ミ が



何よりも大切だったのに




本当は護りたかった。
それだけはいつまでも変わらない事実。






ごめんね。


もう小さい頃のように無邪気にキミを抱き締める事も出来ない。




守ると決めた君の
いつのにかすり抜けて、

(それでも後ろを振り返れない僕を許して下さい)






Fin
.


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