Short story2
□My Mother.
1ページ/1ページ
(一護独白)
どこまでも続く厚い雲に覆われた暗い暗い空。永遠に思えた降り続ける雨。
貴女を失ったのも、こんな日だったね。
My Mother.
小雨と言うには強くて、土砂降りと言うには少し足りない雨。天から降り注ぐ雫は休む事なくザーザーと耳障りな音色を奏でて地面を叩く。
かたり。
静かな空間に響くその音は、やけに小さく遠くに感じた。目を閉じて、暗くなった視界にただ想いを馳せる。
思い出す
思い出す
許して欲しい訳でも忘れたい訳でもなく。ただあの暖かかったあの人の姿を思い出す。
(一護、一護、)
ああ、そうだ。
貴女の声はいつも穏やかで暖かく、日だまりのように降り注いで。
とても優しかった。
まだ色濃く耳に残る声。懐かしさに浸る程昔ではなく、思い出と呼ぶにはあまりに鮮明で眩し過ぎて。
(俺は貴女の為に何か出来ていたんだろうか、)
不安に押し潰されそうになった時、いつも救ってくれたのは貴女だったね。
いつも与えられてばかりで何も出来なかったのは無力な俺。
「……」
かたり。
また音がして、扉が閉まるのが解った。黒髪の少女と小さなぬいぐるみが気をきかせて出ていってくれた事も。
「…ありがとな」
返ってくる事のない言葉を呟いて、また闇に視界を戻した。
Fin
一護+ルキア(+コン)
.