Short story2

□未来のキャンバス
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青と真っ白なペンキで彩られた広大なキャンバス。



それにそって、真っ直ぐ。ただ真っ直ぐに進んでいく純白な淡い線。



鳥が飛ぶ。
風が舞って草木が揺れる。
それにただただ見守る自分。



まるで"彼ら"も新たな生命の誕生を祝福してくれているように。




『十四郎、さん』




病室のカーテンが揺れる。その声に何故か鼻の奥がツンとして、目を閉じた。



あんなに長く永く感じた時間は初めてだった。まるで永久に終わらない時間。




『十四郎さん、』




そう言ってひどく幸せそうに目を開けて、黒髪を見つめる彼女。うっすらと涙。


"泣くな"と言った。確かにそう言った筈の口からは言葉は出ていなかった。何か言葉を発しようとするも、喉の奥からは情けないぐらいに何も出て来ない。



ゆっくりと頬を滑る指。その温もりで、気付いた。




『十四郎さん、泣かないで』



泣いていた。泣いていたのだ。




今日生まれた命。



彼女がこの子を此処に連れて来てくれた。



彼女がこの子を自分の腕の中に連れて来てくれた。



長い永い時間ずっと待っていたんだ。そして今日。





生きたい、生きたいとメッセージが込もった声を聴いた時。


懸命に生きようとする我が子の声を聴いた時。



胸から込み上げてくる何かを、抑える事が出来なかった。愛しくて、愛しくて、苦しいぐらいに。




(なぁミツバ、)





お前に逢えてよかった。
お前を愛してよかった。
無事に帰ってきてくれてよかった。




俺を選んでくれて有難う。
いつも側で支えてくれて有難う。
この子を産んでくれて有難う。





(これからもっともっと幸せにしてやるから、)




それから、





(愛してる)




腕の中にそっと二人をしまい込んで、強く抱きしめた。





Fin


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