Short story2

□月夜の鬼事
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(さあ、僕を)
(捕 ま え て み ろ)







今宵も深い闇の中浮かぶ月。神秘的な淡い衣を纏いそれは地に降り立つ。




砂利を滑る草履の音が、やけに大きく。暗闇に溶けては消える。かつてない程の静寂の中、鬼は気配を、息を殺し。呼吸が荒い。まるで身体そのものが、それであるかのように脈を打つ。それは何より生きている証。




古来より、人はそれを心の臓と呼んだ。故に必ず人が持つ目に見えず不確かなそれは、その場所にあるのだと答えるのだろう。




暫くは大丈夫そうだ。呼吸を整えてそう一瞬気を緩めてしまった。大丈夫だ。その根拠のない確信が、油断と隙を作ってしまったのだ。





それ程の実力を持つ者には、一瞬でも充分過ぎるぐらいだった。




銀の衣を纏いて一歩先に降り立つ鬼。ゆるりとした動きで、だが確実に追い詰め、






『捕まえた』






掴まれた腕。
脈打つ鼓動が敗北を宣告。


ずっと逃げていたかったのだと思う。
だがどこかでこうなる事を望んで、いて。







『僕の負け、だ』


『約束。守って貰うぜ』


『ああ、約束だ』








今宵、深い闇と銀
(交わる)







僕を、捕まえてみろ


君が勝ったら、その時は───








Fin




────────
銀九。

とにかく不思議な感じを出したかった。
鬼事=BLEACH作中に出て来る用語(?)を拝借.追いかけっこ・鬼ごっこの意。

 

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