Short story2

□嫌よ嫌よも…?
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※ハグの日ネタ
※殆ど会話文





何時ものようにストーカーが屋根裏から降ってきた。何やら色々と要らない世話を焼いてくれている(ついさっき食べたばかりなのに昼食を作ったり、無くなった定春の餌を取り替えようとして定春に噛まれたり)が、相手にするのもアレなので放置してジャンプタイムを決め込む(新八はツッコミ疲れからかスーパーに買い出し、神楽は遊びに行っている)。




「……ねえ銀さん、今日は何の日か知ってる?」



藪から棒に、そんなことを聞いてきたあやめに、銀時は欠伸を一つ。


「んなモン知らねェよ。あ、もしかしてストーカー被害撲滅デー?だったら良いなあーボク絶対参加しちゃうなあ〜。何だったら今すぐに」



目線はジャンプに落としたまま。我ながら少し酷いかと思ったが、ストーカーに気を遣う必要もないだろうと考え直してページを捲る。


「そ、そう」


ホッとしたようなそんな声にちょっとした疑問が沸いてふと顔を上げると、目が合った瞬間にあやめは見るからにしまったという表情を一瞬浮かべて、直ぐに手をぶんぶんとこちらに振りながら返事を返した。



(………え、何今の)



しかし直ぐいつものテンションで返されたので、一瞬でその疑問は頭から消去されてしまったが。



「もう銀さんたら照れちゃって!因みに私はストーカー兼天使だから対象外だゾ☆」

「照れてねェよ!つか遠回しに消えろって言ってんの聞こえなかったのかオイ!!」

「心配しなくても私は銀さん専属の恋の奴隷よ!」

「テメェを心配するぐらいなら三丁目の村田さん心配するわ!」



ゼーハー、ゼーハー。
ああもう、この自称恋の奴隷兼ストーカーを相手にしていると直ぐに大量の体力を消耗するから嫌だ。銀時は苛々を隠さず、乱暴に頭を掻いた。確かに外見は良いし乳もそれなりにデカい。しかし性格は見ての通りのドが付く程のM。正直、性格に難有どこの騒ぎではない(自分の性格を棚に上げて、酷い言い様である)。せめて会話のキャッチボールさえ上手くいけば、また印象も違ってくるというのに。



「あっ、大変。そろそろ仕事の時間だわ。名残惜しいけど、またね銀さん!」

「おー二度と来んな……っと、ちょっと待て。一応さっきの答えは置いてけよ気になるから。どうでも良いけど」

「え、あ、…引き止めてくれるのは嬉しいけど…!ど、どうでも良いなら大丈夫よ大したことじゃないから!」



(え、何故に赤面?俺なんか変なこと言った?)
(つーか、んな勿体ぶられると余計気になるんだけど)



何故かあからさまにテンパっている。そんなあやめを見るのは何だか新鮮で、柄にもないが少しちょっかいを掛けたくなるのが人の性。




「良いから言え。気になんだろーが」

「……」

「んな答えられないよーな日な訳?」

「……グの…日」

「は?」

「だ、だから……今日は、は、ハグの日なの!」




顔を真っ赤にして盛大に言い切った。普段際どいことを平気で言ってのけるこの目の前の女が、『ハグ』だなんて可愛らしい言葉でこんなに取り乱すとは。とても驚いて、銀時は口をポカンと開ける。


「え、何。なんでそんなテンパってんの?」


いつにもまして理解不能である。
(まあ元々、直ぐに乙女心を理解するような男ではないのだが)



「ホントはハグの日を口実に抱き締めて、とか言ってみたかったけど私には無理だったわ!だって私正攻法なんてどうしたら良いのか分からないもの!!」

「……え」

「それなのにちょっと期待しちゃった自分が恥ずかしい!銀さんの前でこんな醜態見せるなんて!そういうプレイならまだしもこんなの私らしくないじゃない!」

「ちょ、さっちゃん話聞いてる?」




正に言葉通り、我を忘れて一人マシンガントーク。え、てかコイツ意外に乙女っつーか可愛いとこもあ……いやいやいや何言ってんだ俺。

そんな自問自答をしながらどうすれば暴走を止められるんだろうと考えて出た答えは、本当に柄にもないこと。きっと暑さでどうかしていたのかもしれない。



「……あー、取り敢えず黙んなさい」

「…っ!?」



ピタリとあやめの動きが止まる。どうやら正解だったようだ。本当に、柄にもないけれど(何度言っただろう、柄にもないって)。




(別にコレ、他意はないからね断じて。ただ俺もそこまで鬼じゃないし?正直ちょっと可愛いとか思ったかもしんないけど深い意味はないからね、うん)



「え、あ、あの、銀さん何して……っ」

「……何って…ハグ?」




今にも湯気を出して倒れそうなあやめに苦笑して、更に腕に力を入れた。抱き締めて気付いたのは、自分と比べてとても小さい身体。仄かな甘い匂い。どうやらコイツも、そう。普通の女子と同じなのだということ。

あまりにも恥じらうので、つられてこちらも照れてしまった。



「ったく。アホだなァ、さっちゃん」

「……え、ぎ、銀さん?」

「…アホなのは俺か」



案外健気なヤツだった。
意外にも臆病で、可愛らしいところもあるのにそれを何故かひた隠しにしていたらしい。抱き締めた瞬間に、クラクラとしたのはどちらか。

もっと正攻法で攻めれば良いのにと思う。そうすれば、多分。受けとめてやらなくもないのに。




「なァ、さっちゃんよ」

「…な、な、何?」



嗚呼、もう本当に。
予想外だこんなの。




「…ちょっとグッと来たわ」







(ま、まあ今日ぐらいは…甘やかしてやるよ)





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銀(→)←さち。
銀さんはふとしたことでさっちゃんの魅力に気付けば良いよ。自分で認めちゃいない(完全には気付いてない)けど、好きになりかけてる感じで。因みにさっちゃんに冷たいのはいつもの仕様です←

この後我慢出来ずに銀さんの腕の中から逃げ出すさっちゃん←

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