(高また)


キーンコーンカーンコーン。
鳴り響く予鈴。

あれ程長く長く感じた時間が、漸く終わりを告げた。



「おーし、テメェらシャーペン持つ手を止めろ〜。後ろから集めんぞー」



担任のその一声で、それまで静かだったみんながざわざわと騒ぎだす。「終わったぁぁ」だの「もうすぐ夏休みだー」だの、「今回は俺100点の自信があるぜ!」だの「先っちょ」だの、その言葉は様々である。


まあ、夏休み前の一つの山を越えたのだ。そのなんともいえない解放感が皆のテンションを高くしているのだというのは良くわかる。



「…はー、おわったッス…」




ぐでー。
効果音をつけるならそんな音。
周りの沸いた空気に馴染めずダルそうに自分の机に突っ伏しているのは、来島また子。明らかに周りの「終わった」とは違う意味の言葉を吐いて考えを巡らせるのは、だった今終了したばかりの算数のテスト。



(また赤点なんてとったら怒られるんだろうな。面倒くさ…)
(だいたいなんで世の中に算数なんてモノがあるんだ)
(世の中間違ってる)



『来島また子』
根っからの文系。算数という科目は不得意中の不得意なのである。


「晋助さ…晋助くんはどうだったッスか?」



本編の設定を引きずるか否か迷ったが、一応は小学生という設定。様付けはおかしいだろうと考え直し、隣の席の男子に声をかける。「晋助」と呼ばれた男子は、頬杖をつきながら面白そうに口元を吊り上げた。



「…俺を誰だと思ってやがる」

「じゃあやっぱり満点ッスか!?く〜っ、晋助くんカッコいいッス!!」

「あんな問題訳ァねェな。テメェもそろばんを習ったらどうだ」



クク、と喉を鳴らして笑う少年に、少女は胸を一層高まらせた。
ああ、なんてカッコいいのだろうか!スポーツも出来るし勉強だって得意。算盤を習っていて更に性格はクールな一匹狼!


年頃の娘は大抵が、クールな一匹狼に惹かれるものである。また子もまたその一人だった。



「あー、でも私はいいッス。そろばん難しそうだし…」



そこまで言うとまたぐでーっと机に突っ伏する。



「もうすぐ夏休みだし、その宿題だけでも大変なのに塾なんて…よっぽど器用じゃなきゃ出来ないッスよ」



グッタリとうなだれるまた子。
その様子を見て、高杉は「コイツァ先が思いやられるな」とめんどくさそうに呟いた。



「そんなに大変なモンか?」

「いっつも最後の日になって焦るタイプッスから、私」



いや自慢気に言われても…と高杉は無言になる。あーもーどうすりゃ良いんスかと頭を掻き毟るクラスメイトに、ハァ…とため息。

そして少女に向かってこう言った。



「教えてやるよ、俺が」

「!」




馬鹿でもわかりやすいようにな、と付け加えたのだが、どうやら目の前の少女は最後の言葉は聞いていなかったようで。



「ほっ、ほっ、ほっ、ホントッスか!?」

「……あ、あァ…」

「やったー恩に着るッス!!絶対絶対約束ッスよ!?」



顔を真っ赤にしながら聞き返して来た少女の勢いに負けて、ただ頷くしか無かったのだった。






テスト
(楽しみが増えたッス!)



────
高誕以来の高また。

一応は小学生の設定ですが…夏休み前ってテストありましたっけ?(爆)何せ通っていたのがかなり前なので曖昧です(苦笑)



配布元:DOGOD69様


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