(一織)



雨がしとしとと静かに降り注ぐ帰り道。鉛色の分厚い雲に覆われて、辺りは薄暗くなっていた(友達と遊んでいたら、案の定遅くなってしまったのだ)


おかげで通り道には同級生はおろか、人っこ一人居やしない。いつも通っている道。それなのに誰も居ない其処を一人で歩くのは何だか心細かった。

まるで世界中でたった一人になってしまったような、どこか違う空間に迷い込んでしまったような、そんな錯覚に陥ってしまう。

ほんの少し怖いと思ってしまった自分を情けなく思って頭を振る。今日は母ちゃんが、クッキーを焼いて待っていてくれると約束してくれた。遊子も夏梨も、父ちゃんも待っているのだ。怖いことなんてあるもんか!


犬や猫すらも通ってはくれないことに少し寂しく思いながら、それはきっと何処かで雨宿りでもしているからなのだろうと考え直して空を見上げた。


静かに降り注ぐ雨。
母ちゃんが、雨は神様が泣いているからなんだと言っていたのを思い出す。泣けない誰かの為に、誰かの代わりに泣いてくれている。



(なあ、なにがそんなにかなしいんだ?)




返ってくる筈のない問いを、空に向かって投げ掛けてみる。

パシャ、と長靴で水溜まりを蹴る。水溜まりを通して覗いても、やっぱり空は悲しい色をしているだけだった。



まだ逆に自分のほうが背負われているような大きなランドセル。それの重さで肩が怠くなって来た頃、小さな公園に差し掛かった。

この公園には良く母ちゃんと遊子と夏梨を連れて来る。言わば家の近所であって、この公園が見えたということはゴールが近いことを意味している。



さあ、もう少しだと重たくなる足を引きずるように力を入れる───と。




「───、」




目の端。
いつもの公園。
淡い胡桃色の髪。
雨の中、蹲る少女。




「───…」




声を掛けようとした。
だけど一瞬だけ、躊躇した。
幽霊なのか、人間なのか、判断が出来なくて。


…だけど声を掛けた。


綺麗な瞳。
温かな胡桃色。
蹲るその背中が、震えていたから。



「…どうしたんだ?」

「!」



なるべく優しく声を掛けた筈だったけれど、その子は大きく肩をびくつかせた。

雨の中傘も差さずに居る女の子。そっと傘を少女のほうへ傾ける。


振り向いた知らないその子は、瞳に大粒の涙を浮かべていて。
綺麗な色の瞳に、ドキッと心臓が跳ねたのは何故だろう。




「だ、れ…?」

「…とおりすがり。どうして、かさももたずにすわってたんだ?」

「おうち、わからなくなっちゃって、」

「まいごになっちゃったのか?」

「…うん、」

「……そっか」




聞けば、その子は最近この辺りに引っ越して来たのだという。もしかしたら自分と同じ学校の転校生なのかもしれない。




(まいご、は…どうすればいいんだ)



どうしよう、と考えを巡らせても中々良い案は浮かばずにいた。
だが大粒の涙を溜めて、自分を見つめる少女を放っておく訳にもいかず。



「とりあえずオレんちにこいよ、かぜひくからさ」

「…え?」

「オレんちにくればなんとかなるよ」

「………」

「かあちゃんがさ、クッキーつくってまっててくれるんだ。ぜったいお前のうちもさがしてやるから。な?」

「…ホント?」

「ああ」




頭を一撫でしたあと、やくそく、と言いながら小指を差し出す。すると少女は安心したのか、泣きながら自分にギュッと抱き付いてきた。




(……!!!!!)




驚いて思わず身体を硬直させた。
…が、その硬直は直ぐに解けることになる。




『…ありがとう…』




泣きながら少女が小さく呟いた、お礼の言葉が聞こえたから。






(でも悪い気分じゃない)





(この二人が手を繋いで歩くようになるのはもう少し後の話)




Fin


─────
小学生低学年な一織!
一護の口調には迷いましたが、パロディなので現在の一護をベースにしています。

うちの一護は基本初です←

というか小学生が制服を着るかっていう最大のツッコミどころがあるんですが……まあ、制服有りな学校に通っているということで←


配布元:DOGOD69様


感謝感激ですっ



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