□愛と憎しみは疑似物
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氷の様な冷たい瞳で、どうか僕を見ないで。



毎夜、骸が白蘭に抱かれるのも最早日常と呼べる程茶飯事になっていた。
初めこそ抵抗していた骸だが、最近では抵抗する気力もなく、ただされるがままになっていた。
抱かれるのには慣れたし、別に構いはしないのだ。
ただ、骸にはどうしても嫌な事があった。
それは行為中の白蘭の目だった。
鋭い瞳に、宿る眼光。
それだけなら良い。
しかし、白蘭の瞳はぞっとする程冷たさを孕んでおり、その目を見るだけで骸は凍りつきそうになる。
なんて目をして己を抱くのだろう───と骸は震えずにはいられなかった。
彼が何を考えてそんな目をして自分を抱くのかさっぱり分からない。
ただ、不快感が積もるばかりだ。

その日、骸は初めて白蘭にその事について文句を言った。
さあこれから行為をしよう、という時に、白蘭にとってはどうでもいい事でお預けを喰らったので、明らかに不満そうな顔をして白蘭は愚痴を漏らす。

「なんでこのタイミングぅ?我慢の限界なんだけど」
「お願いですからその前に僕の質問に答えて下さい」

珍しく下手な骸に、白蘭は目を見張った。
彼がここまで下手に出るとはまた珍しい事があったものだ。




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